第5話 巨乳のエルフから危険なお誘いを受けましたが、志向の相違により丁重にお断りしました

「一緒に行かないか?」

 胸の谷間を見せてにじり寄るルイレムさんの凄まじいまでの色気と気迫に、私は思わず後ずさった。

 この旅芸人たちとの異世界道中を始めてから、私には、何もない。

 ネタも寒いが態度も冷たいエルフは、静かに身体を引いた。

「まずは、ここを出ていこう」

 開け放たれたドアの向こうから、舞台のでの声だけが聞こえてくる。

 ……遅い、遅すぎる!

 ……真打は最後に現れるもんだって座長が!

 ……俺がいつ、あいつを真打にした!

 ホーソンとイフリエが、ルイレムさんが出てこない間を必死でつないでいる。

「稽古見てるうちに、放っておけなくなって」

 それは、売れないままで地下アイドルの時代を終わらせてしまった私にしか分からない気持ちだった。

「自分で何とかするんじゃないか?」

 簡単にそう言われると、何だか腹が立ってくる。

 なぜかは本当に分からないが、つい言い返していた。

「ちょっと冷たくありません?」

 たとえルイレムさんと一緒でも、ここを出ていけないのには別のわけがあった。

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