第3話 カノンの診察
「カノンただいま! 」
家に帰ってきたアリスは鍵を開けて、すぐに妹のカノンの
その後ろを歩く魔法使い:テオはその様子を見て
「ちょっと、
とアリスに声を
ベッドで寝込んでいたカノンは、
「おかえりなさい…… アリスお姉ちゃん」
と消えそうな声で返す。
明るく振る舞おうとはしているが、さすがに具合が良くないらしく、その表情はいつもより暗い。
◆
老齢の医者が、カノンを診察する間、アリスはテオの着ているオレンジ色のコートの端を、ちょこんと
アリスにはテオから「私より、お医者さんに診てもらうべきだ」と話していた。
医者は先ほど、街の道を歩きながら、見慣れないコートの女性:テオに
「はて、あんたはアリスちゃん達の、親戚かい? 」
と
「あぁ、いや私は―― この子、アリスの友達だよ」
と答えていた。
今、医者は診察の道具を
「うん。 また薬を出していくから、この前の薬と一緒に飲んで、安静にしていなさい。 体を温めて、冷やさないようにだけ注意するんだよ」
と優しい口調で話している。
「ありがとうございます。 あの、今日のお薬のお金なんですが―― 」
「今日は要らないよ」
「え、そういう訳にはいきません! きちんとお礼は払わせて下さい! 」
「いいんだよ、アリス。 君のお爺さんには昔、とても世話になった。 それに、この前の薬代を貰ったばかりだ。 今は大変だろう、代わりに妹と、きちんとご飯を食べなさい」
「でも…… 」
子供ながらに引き下がろうとしない様子を見て、テオがアリスの肩を優しく揺らし
「アリス、ここはお言葉に甘えるべきだ」
「テオさん…… 」
アリスはテオを不安そうな目で見上げた後、医者に向き直り
「わかりました。 ほんとうにありがとうございます」
深々と頭を下げた。
「あぁ。 カノンを大事にね」
それから医者は帰り際に、テオと目が合うと、ちょいちょいと小さく手招きをして、ドアを開け、外に出た。
テオも
「ごめんアリス、すぐに戻るから」
と言って、医者に続く。
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