健全エロゲー転生~不健全版を求めて旅立つ漢の物語~

三国洋田

第1話 変な箱発見

 『セクシーエロティック変態エロバカスケベギャグゲーム健全版』と書かれた箱が道端に落ちていた。


 なんだこれ?

 と思っていたら、なぜか足が滑り、後頭部に衝撃を受け、気を失った。



 気が付いたら、目がよく見えなくて、体がうまく動かせなくなっていた。


 さらに、なぜか肌がスベスベになっているようだ。


 これはどういうことなんだ!?

 俺の肌は、おっさんらしいガサガサ肌だったのに!?


 こ、これは、もしや赤ん坊になっているのか!?


 俺は転生したのか!?


 前の俺はどうなったんだ!?


 死んでしまったのか!?


 どうなんだ!?


 混乱して泣きまくってしまった。



 何日かして、ようやく落ち着いた。


 どうやら俺は本当に転生したようだ。


 なぜこうなったかは分からないが、現実を受け入れるしかないな。


 では、せっかく生まれたんだし、がんばって生きようか。


 とりあえず、赤ん坊らしく食って、寝よう。



 あっ!

 性別は男みたいだな。


 定位置にアレが付いているぞ。


 よろしくな、新しい息子よ!!


 活躍を期待しているからな!!!!!



「ピー、ピー、ピーピーピー、ピーピーピーピーピー、ピー、ピー」


 親と思われる人がピーピー鳴いているんだけど、これはなんなんだ?


「ピーピーピーーー! ピーピーピー、ピー、ピー、ピー、ピー」


 これが、ここの言語なのだろうか?


 覚えるのに苦労しそうだなぁ。



 目が見えるようになった。


 そして、奇妙なことに気付いた。


 親と思われる人たちの全身が白いのだ。


 でも、俺の体は、どう見ても普通の人間なんだよな。


 これはどういうことなのだろうか?


 よく分からんなぁ。



 ん?

 右下に何かあるな。


 丸くて青いボタンのようなものだ。


 なんだこれ?


 ボタンに触れてみた。


 俺の前に、ゲームに出て来るような青色で半透明のウィンドウが現れた。


「おっ、ようやく表示しやがったでげすね」


 ウィンドウから声が聞こえてきた。

 さらに、ウィンドウにも聞こえたものと同じ文が日本語で表示された。


「な、なんだこれは!? なんでしゃべっているんだ!?」


「我輩は見ての通りのウィンドウでげすぜ。名前は『ウィンドウさだ』でげすぜ。しゃべれる理由は不明でげすぜ」


「ウ、ウィンドウ!? ウィンドウさだ!?」


「そうでげすぜ、アニキ」


「なんでアニキと呼ぶんだ!?」


「なんかそんな感じがするからでげすぜ。まあ、そこはたいした意味はないでげすから、気にしなくていいでげすぜ」


「あ、ああ、分かったよ……」



「ええと、君はなんなの?」


「だから、ウィンドウでげすぜ」


「それはなんなんだ?」


「見ての通り、空飛ぶ文字が出る四角でげすぜ」


「そ、そうなのか……」


 なんなの、これ?


 訳が分からなさすぎる……



「ん? 下に『バックログ』と書いてあるボタンが付いているようだな。なんだそれは?」


「ここを押すと、バックログが表示されるでげすぜ」


「バックログって、過去に表示した文のことか?」


「その通りでげすぜ。見てみるでげすか?」


「あ、ああ、そうだな。せっかくだし、見てみようかな」


 ボタンを押した。



 えっ!?

 これは!?


 『工口こうぐち 助平たすへい、転んで後頭部を打って死亡』


 『その後、セクシーエロティック変態エロバカスケベギャグゲーム健全版の世界に【ヴェーケスード・イタンヘード】として転生した』


 と書いてあるぞ!?


 工口こうぐち 助平たすへいって、俺のことじゃないか!?


 俺って、ヴェーケスード・イタンヘードという名前なのか!?


 なんでこんなものが書いてあるんだ!?


 セクシーエロティック変態エロバカスケベギャグゲーム健全版って、なんなんだ!?


 あっ、書いてあるじゃないか!?


 なんて親切なんだ!!

 素晴らしいな!!


 『セクシーエロティック変態エロバカスケベギャグゲーム健全版とは、エロゲーを健全にしたものである』


 『この世界はエロゲーなのでエロにまみれているが、健全版なので、それらはすべて謎の白い光やピーという音などで隠されている』


 『どこかに、この世界を不健全版にする方法がある。エロを欲する者よ、探してみろ。桃源郷がそこにある』


 と書いてある。


 な、な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?


 エロにまみれた不健全版だとぉぉぉっ!?


 そんなの……


 そんなの……


 そんなの探すしかないじゃないっ!!!!!!!!!!



「ウィンドウさだ!!」


「どうしたでげすか、アニキ?」


「旅に出るぞ!!」


「えっ? なんででげすか?」


「不健全版を見つけるためだ!!」


「はぁ、よく分からないでげすが、燃えているようでげすね、アニキ! なら、我輩もお供するでげすぜ!!」


「よし、行くぞ!!!!!」


「了解でげすぜ!!」


 俺はハイハイで進み出した。



「ピー! ピー! ピーピーピーピー!! ピーピーピーーーーー!!!」


 その途中で、親と思われる人に捕まった。


 父さんか母さんか分からないが、俺を止めないでくれ!?


 俺を行かせてくれぇぇぇっ!!!


 俺は、俺は不健全版を探しに行かなければいけないんだぁぁぁぁぁっ!!!!!!!



 抵抗むなしく、ベッドに戻された。


 親と思われる人は、部屋から出て行った。


「戻されちゃったでげすね、アニキ」


「くそっ!! この体では旅に出るのは無理なのか!?」


「そうかもしれないでげすね。アニキ、これからどうするでげすか?」


「こうなったら、育つしかないな!!」


「育つでげすか? どうやってでげすか?」


「たっぷり食べて、たっぷり寝る!! そして、できる限り運動する!!」


「なんか長くなりそうでげすね」


「そいつは仕方ない! 必要経費というヤツだ!!」


「じゃあ、気長にやりましょうでげすぜ」


「ああ、俺たちの戦いはこれからだぜっ!!!!!」


「それ、なんでげすか?」


「細かいことは気にするなっ!!!!!」

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