バイト編(後編)

スポーツ公園前で待ち合わせして中に入りました。

そこではたくさんのスポーツがあちらこちらで行われていました。

私はスポーツと無縁なのでとりあえず日焼け止めを塗り、日陰を探しに行きました。


しかしそれは許されませんでした。


それぞれに役割が割り当てられ、私たちトンチキトリオは「総務」というなにやら重要そうな任務を任せられました。


少し役職が着いた気分になり、ピリッとした気持ちで任務を遂行しました。


総務は木陰で休むことは許されない。

「アレをもってこい」と言われれば急いで取りに行き、「あそこにコレ渡して」と言われれば走って渡しに行く。



間もなく……気がつきました。



総務とかいうエリートコースの役割を割り当てられて浮かれていたけれど



もしかして、これってまさかパシリかな。



一句出来たところで私たちは仕事を辞めました。



涼しそうな室内で椅子に座り水なんて飲みながら資料を読んでいる放送係、表彰の時にメダルをかけるだけの係、私たちは念入りに他の人の仕事の偵察に行きました。


そして、最後!

私たちに総務を振り分けた担任が! なんと!

日陰で冷たい氷水の中からジュースを取り出して渡すだけ、という仕事をしていました。



「なに……やってるんすか」



低く唸るような声が今年いちばんの猛暑になろうとしている威力を弱まることを知らない太陽の下、響いた。

今がピークと言わんばかりにジリジリと肌を焦がす。



「えっ、あっ」



見られた、やっべ。

確かにそんな顔をしました。



私たちはいちばん大変で辛い仕事を振り分けられていたのです。暑くて、移動距離は長くて、スポーツの大会をしている人以上に汗をかき頭がグルグルしてきたところだったから、その担任が冷やしていたジュースを受け取りしばしの休息を取りました。



そしてここからは私たち3人はまたほかの偵察に翻弄しました。

まずはオリンピック選手とやらがいるということでその人が競技が終わるまで待ち、サインを貰いました。

ついでに能力的には高いのか低いのか分からないがイケメン風の人がいたので一緒に写真を撮ってもらいました。


将来価値がつくかもしれない。


そんなこんなでこの最低な夏は最後にはあっさりと楽しい思い出となり終わることとなりました。


そして先日誰だか知らないイケメン風の横でにっこりと笑う私のアホ面写真が実家の断捨離の時に出てきました。


その人は結局オリンピックで見かけることはありませんでした。


なのでそっとシュレッダーに通しました。



そしてオリンピック選手の方は最近まで第一線で活躍されていました。



サインは断捨離候補から外れました。



もらったバイト代は交通費にも満たないお小遣いでした。



そして次はトリオ、スキーに行くの巻。です。


いつもありがとうございます!


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