転生失敗したのですが?

まぬゆ

第1話

「え?転生…ですか?」


突如として言い渡された命令。え?こんな私が?え?下の下の位にあるような私がですか??衝撃すぎる事態を飲み込めずにいる。転生といえばもっと偉い天使たちがやる仕事だと思っていたし、実際そうだった。


「…そう。あまり時間がないから手短にお話しするよ。転生先での仕事がなんだかは知っているかな?」


「…いえ、何も。」


何を隠そう、私のような位にいる天使たちにそんなものを知る方法もないし誰も教えてくれようとはしないのだから。…ってか、なんでこんな話になったんだろう………。


「転生先ではその地のことについて調査をすること。具体的に何をするかはもちろん君に任せるよ。帰ってきた天使たちが調べてきて、まとめたものがあるから、参考にして欲しい。」


すっと目の前に差し出されたのは手をいっぱいに広げて、小指の端っこから親指の端っこギリギリくらいの厚みはある本だった。とりあえず中を見てみればびっしりと字が並んでいる。字の読みくらいは私でもできると思っていたけど……これは本当に言葉が書いてあるのだろうか、題名のなんとかについてのところくらいしか読めないんですけど。

えーっと…人間たちの暮らしについて…人間たちの食べ物について…人間たちの行動について…?人間についてばっかりじゃないか。

変な顔をしながら分厚い本と睨めっこをしているのをみて神様がふっと笑った


「どう?結構面白いでしょ?この地にあるものって言ったのにほとんどの天使たちは人間たちについてばっかり書くんだ。もちろん土地がどんな成分でできているかとか人間以外についても書いてるところはあるけどほとんど人間についてなんだよねー。これが。人間がよく見えてくるみたい。」


……こんなに字がずらずらと並んだ文章なんて書けないんですけど……。普通に私になんてできないし…


「大丈夫さ。みんな人間界で読み書きを学んで帰ってくるんだよ。だから君でも絶対できる。」


心が読まれているみたいに答えてくる。


「…でもなぜ、私のような天使が転生をすることになったのですか…?」


「ちょっと前に調査から帰ってきた天使がいる。10年以上も調査に行っていた天使だ。そいつの書いた本はすごかった。その天使と君は同じ位にいた天使だったし…君に似ているなって、思ったんだ。」



「……ってことがあって、わたし、明日から人間界に行くことになったんだ。」


「えっ!すごっ!?そんなことあるんだねっ!応援してるよー。え?いつ帰ってくる?君行く世界のパトロールいけないかな!?」


いつも通り元気で笑顔の明るい私の友達の天使。しつこいくらいに喜んでくれた…のかな。

私たちのいる位の天使の仕事は下界の見守り、パトロール。人間が悪いことをしたら、その人には罰を与える。いいことをした人にはいいことが来るように褒美を与える。そんな感じの仕事をするんだ。下界は結構量があるから一つの世界につき3人くらいの天使で見守っているんだ。あ、神様は一番上の位にいる人だよ。

私含め3人で見守りをしている世界にいる人間は本当に愚かなもので、なりたいとも思わないしできれば見たくもない。


「…うん。よくわからないんだけど、いつ帰ってきてもいいみたい、もういいなって思ったら帰ってきなさいって神様が。」


正直神様が私を選んでくれたことがとても嬉しいことだ。頑張らなくてはっ…!こんな私たちのこともちゃんとみてくれてたんだね。


「そっか。しばらく会えなくなっちゃうね。…転生先はもう決まってるの?決まってるんだったら仕事場そこの世界に変えるんだけどっ!?」


「…それが、ランダムらしい…行ってみないとわからないって…。」


「えっ、やばっ。がちやばじゃんか。本当に会えなくなっちゃうんだね。…うん。頑張ってねっ!」


「……っ!……うんっ!行ってきます!!」

最後に彼女と話せてよかった。自信でたぞ。転生するための準備を済ませて、自室を飛び出した。




……よし。ここの扉をくぐれば転生…できるんだ。頑張ろう。うん。頑張るぞ。


……ガチャ。



目が覚めたらそこは、森の中。


「…え?」


え、まって。これやばいんじゃないの?燃えてるんだけど。森燃えてるんだけど。おまけに体めっちゃちっちゃくない?私。人間の子供が転生先?スタートは火事が起きてる森?…ん?


転生、大失敗しちゃったんですけど……!?!?

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