第9話

家につき、病院から引き取った荷物を整理してから、ノートを手に取った。それにしても、死の直前父が大切に眺めていたノートには何が書かれているのだろうか、好奇心と同時に恐怖もあった。また父の知らない一面を知ることになるのだろうか。果たしてそれは、良い部分か、悪い部分か。それでも私は父をもっと知りたいと思い、意を決してノートを開いた。

ノートを開いて、中身を目にした時、身体中を電流が流れるような衝撃を受けた。信じられなかった。なぜなら、ノートにあったのは、私に関する新聞の記事だったからだ。父が認知症だと告白した日から、亡くなる日の前日の分まで、びっしりと貼り付けられていた。


父は認知症ではなかったのかもしれない。

ではなぜ、そんな嘘をついたのか。

その時、ふと母の言葉を思い出した。

「お父さんはね、嘘をつくのが上手なのよ」

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