第4話

大学を卒業して本格的に歌手デビューをすると、私は一世を風靡するようになった。幸運なことに、母の声を見事に受け継いだ私は、『新生立川早苗』と取り上げられることも多くなっていた。発売する曲のほとんどが爆発的ヒットとなり、むしろ母よりも売れているんじゃないか、と思うことがあるほどだった。

しかし、どんなに世間が私を持ち上げようとも、父が私と母を同等の歌手だと認めることはなかった。それが悔しくて、新曲ができる度にいつも父に1番に聴かせては、「そろそろお母さんみたいな歌手になれてるかなぁ?」と聞いてみるが、答えはいつも「いや、何か違う」の一点張りだった。

嘘が上手なら『なれてる』って言えばいいのに、とイライラしながらも、私は父に認めてもらうことを決して諦めようとはしなかった。

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