第5話
2026年12月21日、母の命日からいよいよ20年が経過しようとしていた。一年で一日、この日だけはどれだけ大きな特番が被ろうとも、予定を空けることにしていた。20年目の12月21日も、私は父と車で母の墓参りに行き、帰路の途中で、カラフルなネオンライトが目に入ってきた。どうやらクリスマスフェスティバルが開催されているようだった。
そうか、その季節か。母が亡くなって以降クリスマスを祝うことはなくなっていた。示し合わせたわけではないが、父も私もそれまで毎年食べていたクリスマスケーキを食べよう、と言い出さなかった。それでも私は、実はクリスマスというイベントが少し好きだった。なぜなら、大好きな母との大切な思い出があるからだ。
私が小学2年生だった時の12月24日、学校で合唱コンクールが開催された。合唱曲は『きよしこの夜』。集団歌唱ではあるが、母の前で正式な作品として歌うのは初めてだったので、期待に胸を膨らませながらも、大きな不安を抱えての本番だった。母に届け、という一心で全力で歌った。私の声量に両隣の生徒からは白い目で見られたが、その日の帰り道母が褒めてくれたので、私は幸せだった。その日の帰りに家族3人で食べたチキンとブッシュドノエルの味は今でも鮮明に覚えている。
過去に想いを馳せている私を察知してか、父の方から『ちょっと寄り道して行くか』と提案してきたので、車を止めて少し見物することにした。
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