第11話 合成錬金術師
「エリン、おめでとう。成功だ。ちゃんとスキルの効果が出ていたよ」
「えっえっえっ、本当ォォォォォォ!」
「けど、ここから先は無償では教えられない」
「む、む、無償? よくお父さんがお客さんと話しているときに聞く言葉だけど、それって報酬が必要ってこと?」
「話が早くて助かるよ。僕は君のスキルの使い方をほぼ理解したと思っている。僕なら君にスキルの使い方を教えてあげられる。だから3つだけ僕のお願いをきいてほしい。どうかな?」
ルーク君がとても爽やかな笑顔で、私の前に手を差し伸ばしてきた。どうしよう……あまりに
「る、ルーク君。ちょっと確認したいんだけど、返事をする前に先にルーク君のお願いを聞いてもいいかな?」
「もちろんだ。まだ確定した分けじゃないんだけど、僕の考え通りなら君のスキルは僕のスキルと相性がいいんだ。だからスキルを使えるようになったら僕に協力してほしい。そういう約束だよ」
「そ、そうなんだね! 良かった。変な約束ならどうしようかと思ったけど、それならいいよ。私にスキルを教えてください」
エリンはそう言うとペコリと頭を下げる。エリンは気づかなかった。ルークがその姿を見てニヤリと笑っていたことに。
「よし契約成立だ。それじゃあ学校が終わってからいろいろ試そう。家に一度帰ったら僕の家に来てくれ。町外れの森の前にある家だけどわかるかな?」
「あっ、あの家ってルーク君の家だったんだ! あの辺りに家はひとつしかないもん。だからわかるよ。それじゃあ後で行くね」
「僕は少し用事があるから、もし僕がいなかったら妹のミアと遊んで待っていてくれ」
学校が終わるとルークは足早に、町の中央の広場へ向かう。広場の周囲は様々なお店が並んでいて、ルークはその中の一軒のお店に入っていった。
◇
「ただいま。ミアいるかい?」
「あっ、お兄ちゃんだ! おかえり~! 今ねぇ、エリンお姉ちゃんと遊んでいたんだよ」
「良かったな。エリン、待たせてすまない。すぐに準備をするからもう少し待っていてくれ」
「うん。全然平気だよ。その間、ミアちゃんと遊んでいるね」
そう言うとエリンはミアのところに行き本を読んでもらう。まるで仲の良い姉妹のようだった。5歳児の妹が8歳児の姉に本を読み聞かせてることを除けばだが。
その後、三人は森の中の遊び場にきた。ここに来るまでの間、ルークは今日の学校での出来事をミアに説明した。それを聞いたミアは「凄い! 凄い!」と騒ぎ、エリンはよくわからないまま照れていた。
「さてと、これから『進化』の検証を行う。『強化』同様にこの2枚のカードで試してもらいたい」
そう言うとルークは2枚の小石のカードをエリンに渡す。
「うん。それじゃあ、やってみるね。『進化』!」
2枚のカードを挟んでいる両手が淡く光る。『強化』のときと同じ光だ。
そしてエリンは手元にある1枚になったカードをルークに渡す。
ルークとミアは興味深げにそのカードに目を落とした。
・【鉱石】ランクF-
「「ワァァァァァァァァァァァ!」」
二人の兄妹は歓声をあげたハイタッチした後、エリンともハイタッチを交わす。エリンは二人のハイテンションに付いていけず、オロオロしていた。
「エリン、君は凄い! 控え目に言っても最高のスキルだ!」
「うん! エリンお姉ちゃんのスキル、素材を進化させるなんてぶっ壊れ~!」
「えっ、そ、そうかな。アハハハハ。二人ともありがとうね」
少し落ち着いた後、ルークはエリンに向き直る。
「これでハッキリしたよ。エリン、君の職業は錬金術師の中でもレアな『合成錬金術師』だ」
「「合成錬金術師!?」」
「そうだ。この職業は広く知られていない。なんといってもレアな職業だからね」
「さっきから『レア』って言葉が出てるけど、どういう意味なの?」
「簡単に言うと珍しいということ。同じ職業なのに能力が他人と違うケースは稀にあるんだ。今回のエリンのようにね。錬金術師については既に研究が進んでいて、錬金術師のレアは合成錬金術師と呼ばれているんだ」
ミアはビックリしていた。自分が合成錬金術師であることよりも、それについて詳しく知っていたルークの知識に驚いていた。
「この合成錬金術師の能力はとても優れているが、1つだけ大きな制約がある。スキルの媒体には全く同じ物同士しか使えないんだ。たとえばヒーリル草を『強化』しようとしても、全く同じ植物は存在しないからスキルは発動しない」
「えっ! そ、それじゃあ、私のスキルって使い道ないの? ルーク君のカードにスキルは使えたけど、カードをいくら『強化』や『進化』させても意味ないよね……」
エリンは自分の能力がレアで優れていると教えてもらいとても嬉しかったが、それを使うことが難しいと言われショックを受けていた。
するとルークはエリンの前に1枚のカードを出す。
「これはさっきエリンが小石から鉱石に進化させたカードだ。『リリース』!」
カードは消えると同時に小さな鉱石に変わった。石の表面に少し褐色の金属のようなものが見える。ルークはそれをエリンに渡した。
「この鉱石はエリンが小石を錬金して作ったモノだ。これでも意味はないかな?」
「エッッッッッッッ! カードが本物になったよ! ルーク君、これは一体どうなってるの!?」
「僕のスキルは物をカード化できる。面白いことにまったく違う小石でも、カード化すると見た目は同じ『小石のカード』になるんだ」
「それって、もしかすると……」
「そう! お兄ちゃんとエリンお姉ちゃんのスキルは、最高に相性が良いってことだよ!」
ミアは話に割り込むようにエリンに向かって笑いながら抱きついた。
「凄い。本当に凄いよ! ルーク君、ミアちゃん、本当にありがとう。ルーク君がいれば私のスキルでもなんとかなりそうだよ!」
ルークがエリンに説明したことに嘘はなかったが、一部説明していないこともあった。実は合成錬金術師は国の研究機関や鍛冶師ギルド、錬金術師ギルドなどから引く手あまたの職業であるということ。
ポーションを2つに分けるなどして、合成に必要な全く同じ媒体は簡単に用意できるからだ。
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