第9話 初めてのコンプリート
「お兄ちゃん、穴を見つけた! きっとこれだよ」
「よくやったぞ、ミア! どうりで見つからなかったわけだ。まさか最後の1種が地面の中にいる魔物だったとはな」
ルークはすぐに腰につけた鞄から1枚のカードを取り出し『リリース』と唱える。するとカードが巨大ダンゴムシの死骸に変わる。
「よし、エサはこれでいいだろう。ミア、その木の裏にでも隠れてくれ。僕は穴の近くで待機する」
二人はそれぞれ獲物を狩るため移動する。ルークはナイフを構え気配を消した。ヒトは無意識に微量な魔力を身体に纏っている。これを限りなくゼロにすることで、野生動物でさえ気づけないほど気配を断つことが出来るのだ。
これを行うには高度な魔力コントロールが必要だが、前回勇者だったときにマスターしていたルークには簡単なことだった。
ボコボコボコッ
穴の中を何かが移動する気配がする。その何かは穴の出口の近くで止まった。クンクンと臭いを嗅ぎ、巨大ダンゴムシの死骸を見つけると勢いよく穴から飛び出してきた。
やっぱりモノラだったか! 前回は気づかなかったけど、この地方にも生息していたんだな。
巨大ダンゴムシの死骸に噛みつくモグラのような魔物に向かって、ルークはナイフを振り下ろすようジャンプした。モノラはルークの気配に気づいたが、時すでに遅く首にナイフが突き刺さる。苦しげに鋭いツメを振り回すも、背後から首を刺しているルークには届かず絶命した。
「フゥ……罠が成功して良かった。このツメで攻撃されると今の僕だと大怪我を負う危険もあるからな。ミア、もう出てきていいぞ」
「はーい。うわぁ、結構大きなモグラさんだったんだね」
「こいつはモノラっていう魔物だ。モグラに似ているけど体内に魔石があるから動物とは違う。それに人だって襲ってくるから危険なんだぞ。見かけても絶対に近寄るなよ」
ミアの頭を撫でた後、ルークはモノラに手を置き『コレクト』と唱えカード化した。
・【モノラ】ランクF
すると頭の中に女性の声が響く。
『【魔物図鑑】にコレクションしますか?』
ルークは頭の中で「はい」と答える。
『コレクションボーナスで体力が1上がります』
『【魔物図鑑 スタットの町(9/9)】をコンプリートしました。スペシャルボーナスとして全ステータスが1上がります』
『【素材図鑑】が解放されました』
立て続けに聞こえた女性の声にルークはガッツポーズをとる。
これは面白い! まさしく俺が求めていた職業だ!
ルークが魔物図鑑の新たな機能に気づいたのは4日前のことだった。魔物図鑑についてじっくり調べていると『スタットの町(4/9)』と書かれてあるページを見つけたのだ。この4という数字にルークは心当たりがあった。魔物を図鑑にコレクションした数と一致したのだ。
そこでルークはこの町に生息する魔物は9種類いて、全て揃えると何かが起こると予想した。それから毎日ミアに協力してもらいながら、魔物のコンプリートを目指していたのだ。
そして、とうとう最後の魔物であるモノラをコレクション出来たのである。
ルークは浮かれながら『ステータス』と唱えた。
---
【名前】ルーク
【レベル】1(固定)
【職業】
【スキル】コレクト、リリース
【図鑑】
魔物図鑑(9/255)
・スタットの町(9/9)
素材図鑑(0/500)
ボーナス
・腕力+2
・体力+2
・機敏+4
・知力+3
・魔力+3
【称号】太陽の女神に仇なす者
---
ボーナスも結構増えてきたな。この値は俺の能力を上げてくれる。例えば腕力は2しか上がっていないが、その効果は実感できるほどだった。
このボーナスがあればレベルが上がらなくても、戦闘もなんとかなりそうだ。
そして新たに追加された素材図鑑。分母が500ということは、500種類の素材が存在するということか。これもコレクションしていくのが楽しみだ!
ルークは地面に落ちている小石を拾い『コレクト』でカード化するが、頭に女性の声は流れなかった。
次にルークはヒーリル草をカード化してみる。
すると頭の中で女性の声が流れた。
『コレクションボーナスで知力が1上がります』
なるほど……小石はランクG、ヒーリル草はランクF。コレクションの対象はランクFからなのか? とりあえず素材図鑑を確認してみるか。
---
【図鑑】
素材図鑑(1/500)
・Fランク(1/100)
---
Fランクが表示されている。他のランクはコレクションするまで表示されないみたいだ。この表現からするとFランクの素材を全て集めると、スペシャルボーナスがもらえそうだな。よし! 早速だけどFランクの素材を集めてみるか!
この後、ルークはミアに素材集めゴッコと称して、様々な素材を集めさせたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます