第8話 シエル先生
前回と同じくアルカディア学園へ行くかどうするか……
後悔し続けたあの事件を止めたい気持ちもある。けど俺がそもそも学園へ行かなければ事件が起きない可能性もあるんだよな。
学園へ行くなら、英雄職じゃない今回は成績優秀者として選ばれる必要があるけどこれは大した問題じゃない。厄介なのはアリス達と一緒にいると運命ルートに巻き込まれる可能性があるところだ……
ルークが思考に
ニコッと生徒達に笑いかけながら教壇の前に立つ。そして全員が席に着くのを待った後、自己紹介を始めた。
「みなさん、初めまして。私はみなさんの担任になるシエルといいます。実は私もこの学校に来たばかりです。ここに来る前は、ヴァルキア帝国の学校で教えていました。これからの2年間、みなさんと楽しく学校生活を送りたいと思います。よろしくお願いしますね」
今回、町長の強い希望により英雄職の二人を任せられる教師を募集した。条件は高度な教育を行え、かつ王族や貴族についての知識もあること。そして採用されたのがシエルだった。
大陸の中でも有数の大国であるヴァルキア帝国。その帝都で教師をしていたという女性が応募してきたことに、町長と学校関係者は驚いた。
素性の確認については、他国でしかも巨大なヴァルキア帝国ということもあり確認することを諦め、マドリー司祭による実力試験の結果で採用の可否を決めた。
「ルーク、すごく綺麗な先生だよね!? ん? ルーク、なに固まってるのよ」
アリスはフリーズしているルークの肩を突っつく。しかしルークは目を開いたままシエル先生を見たままだった。
ど、どうなっているんだ。ここにシエルがいる……しかも教師だと!?
前回のときの担任は、この町で長く教師をしていたベテランのルワンダ先生だった。どうしてこんなに違う展開になったんだ。
この教師の入れ替えは、町長の息子ドランが剣聖になったことが原因である。自分の息子が恥をかかないよう、教師の募集を強く希望したからだ。しかし、このことをルークは知らなかった。
その後は生徒による自己紹介、そして文字の読み書きを練習し一日目の授業は終わった。
「みなさんお疲れ様でした。それにしてもアリスさんとルーク君は読み書きが出来るのね。私は個々にあった学習を大切にしているの。だから出来る人はどんどん次の学習に進んでもらいます。明日、二人には別の課題をだすわ。楽しみにしていてね」
それを聞いた生徒達は、ルークとアリスを羨望の眼差しで見つめる。ただ一人、嫉妬混じりの眼差しを向ける者もいた。
「あと、アリスさんとドラン君は残ってください。今後も二人には授業が終わった後に特別授業を行います。アルカディア学園へ行ったときに困らないようにしないとね」
「そうだった。ボクは大陸最高のアルカディア学園へ行かないといけないんだった。これだから剣聖は大変だ。シエル先生よろしくお願いします。アッハハハハハ」
「フゥ……帰りたい」
ドランは特別扱いされたことで慢心の笑顔になり、アリスはうんざりした表情で助けを求める視線をルークに送っていた。しかしルークはそんなアリスの視線を気にした素振りも見せず教室から出て行った。
◇
「お兄ちゃん、おかえり。今日も狩りに行くの?」
「ミア、ただいま。もちろん行くよ。最近すごく調子が良いんだ。だから今の生活スタイルは継続したい」
毎日欠かさず魔物を刈り続け、ルークはカード化できる上限が当初の5枚から11枚に増えていた。これは魔物を倒しスキルを使い続けることで、職業の熟練度が確実に上がっている証明でもあった。
この世界では人、亜人、魔人などの高い知性を持つ人型の生物を『ヒト』と称した。ヒトは例外なくレベルを持つ。魔物を倒したりスキルを使うことで経験値を得て、それが一定以上溜まるとレベルが上がる仕組みになっている。それ以外にも偉大な功績を残すと経験値をもらえることもあるが、これについては測定が難しく明確な基準はわかっていない。
ただハッキリとわかっていることもあった。それは『経験値はレベルが上がると得られる値も少なくなる』ということ。同じ事を行ってもレベルが高いときよりも低いときの方が、多くの経験値を得られることは研究により判明していた。
つまり自分のレベルに適した行動でなければ、レベルは上がらなくなるのだ。
レベルが50を超える達人、80を超える名人、100を超え伝説と呼ばれる者達。彼らは例外なく鍛錬と試行錯誤を絶え間なく続け、その域に至ることができた。
しかしルークはこのとき気づいていなかったが、8歳児としては異常な職業の熟練度になっていた。
その要因はルークにかけられたレベルが1固定の呪いにある。レベルが常に1のため、経験値減少の影響を受けずに経験値が手に入ってしまうのだ。
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