12月 12月3日

 真輝からトートバッグをもらった。帆布のしっかりした材質で、どこで買ったのかと聞いたら、最寄り駅に出店している鞄屋だという。



 クリスマスキャンペーンをやっていたとかで、ツリーの帽子を被ったクマのキーホルダーが持ち手についていた。12月3日の俺の誕生日まで、ギリギリまで悩んでいたら、購入が12月に入ってしまったらしい。



「クリスマスキャンペーンだったけど、クリスマスじゃないから。これは理玖の誕生日プレゼントだから」



 なぜか自分の方が嬉しそうな顔をして、真輝はそう言った。誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントをひとまとめにしないことが、俺の恋人としての矜持だと、以前なにかのタイミングで聞いた気がする。



「理玖、生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ」



 少し照れくさそうに、でもまっすぐに俺の目を見ながら、真輝が口を開いた。俺の方が照れてしまって、思わずうつむいたら、トートバッグにぶら下がったクマと目があった。



 なんだよ、なんか文句あるのかよ。



 赤くなった顔を見られたのが無性に恥ずかしくて、俺はクマを裏返した。真輝のストレートな愛情表現には、いまだに慣れない自分がいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る