12月 年越し
大学生時代の友人から、同窓会の誘いがあった。皆それぞれ予定があるだろうに、どうしてか浮かれて十二月三十一日から一月一日までの日程が組まれていたので、年越しを理玖と過ごしたい俺はその誘いを断らざるをえなかった。
それを伝えたら、「行ってくればいいのに」と理玖は笑った。でもそんなこと、できるもんかと俺は思う。
俺と理玖が付き合うきっかけになったのは、忘れもしない二十歳の年越しだ。十二月三十一日、高校の同窓会、慣れない酒を飲んで、酔って、抱きついて、気がついたらこいつのアパートで。なにがなんだかわからなくて、でもただ、体の中に残るほのかな熱に、どうしようもない幸せと悲しみを同時に感じた。
手に入れたものの尊さと失ったものの大きさを、同時に感じたのは初めてだった。彼に触れられたことへの幸福はひとしおで、それと同じくらい、彼と会わずにいた時間の取り返せなさが胸に迫った。
俺にとっての年越しは、そういう日だ。誰かと馬鹿騒ぎなんてできない。理玖と過ごすことができるのに、彼以外を選ぶなんてありえない。
これからずっと、こういう風に過ごして、そしていつか、もしかしたら、彼がいない年越しが来るのかもしれない。その時の思い出は多い方がいい。思い出せる理玖の顔は、いくらあっても足りないくらいだ。
まき、と理玖が俺を呼ぶ。「そんな顔すんな」としなやかな指先が額に触れる。
俺は目をつむって、その柔らかな熱をじっと感じた。
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