9月 楽しいこと

 今日は久しぶりに理玖と遠出をした。数十分電車に揺られ、駅から更に十分歩くと、ショッピング施設と映画館、イベントスペースが一体化した大型商業施設にたどり着いた。



 ぶらぶらと買い物をし、昼食を済ませた後は、ポスターを見かけて気になった、とある画家の作品展を見に行った。



 その作家の絵を、理玖はたいそう気に入ったらしい。薄暗い展示室に入って初っ端、入り口付近の絵にさっそく見入ると、その後の展示も隅から隅まで、真剣な表情で観察していた。



「ごめん、真輝」



 帰りの電車で突然謝られ、俺はびっくりして理玖の顔を見つめ返した。「なにが?」と尋ねると、理玖は気まずそうに目を逸らした。



「俺ばっかり楽しんでたなって。今度は真輝の好きな場所にしよう。……って言っても俺、お前がなにが好きなのか、イマイチわかんないんだけどな」



 理玖はどうやら、本気で言っているようだった。気遣いは嬉しいが、ずいぶんと的外れな見解である。



 俺は今日だって、十分に楽しかったのに。



「俺は理玖が好きだから、理玖が楽しんでるのを見るのが一番好き」



 そう告げると、長い沈黙の後、理玖は「あ、そう」とそっけなく返事をした。



 照れてる理玖を見るのも、俺は大好きだ。

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