6月 エビマヨ

 実は、初めての料理を作るのが苦手だったりする。



 今日は真輝が夕飯をリクエストしてきた。エビマヨが食べたいらしい。珍しいなと思って、つい嬉しくなって了承してしまったけれど、レシピを調べてちょっと後悔した。



 そもそもエビの背ワタを取るという行為が、非常に面倒くさそうだった。やるのが、というより、方法を調べて理解するのが、という観点からの感想だ。



 まあ要するに、この黒い部分がなくなればいいわけで。



 俺はまな板に広げたむきエビたちをしげしげと見つめる。身を屈めて包丁を動かしていた真輝の姿をぼんやりと思い出して、おんなじような角度で包丁を持ち、なんとなくで真似してみる。



 寝かせた刃先をスライドさせるたび、半透明のエビから黒っぽい管が抜けていく。これで合っているかはわからないが、とりあえず背ワタは取れているのでよしとしよう。



 うんうん、意外とできるもんだな。



 そう思って機嫌をよくしていたら、次の工程を間違えた。背ワタを取ったエビには片栗粉をまぶさなければいけなかったのに、間違えてマヨネーズベースの合わせ調味料に放り込んでしまったのだ。



 あ、と気づいた時には、もう遅かった。エビ全体にたっぷりとマヨネーズがまとわりついていた。仕方がないので、そのまま片栗粉を振りかけて、混ぜてみる。



 もったりと質量を増していく片栗粉に、これは果たして、本当にエビマヨになるのだろうかと一抹の不安を覚えた。しかしもう、後はどうとでもなれと思って焼くしかない。



 フライパンでサラダ油を熱し、エビを全て焼いた。お好み焼きみたいなにおいに、そりゃそうだわなと合点がいく。マヨネーズと混ぜた粉物を焼いているんだから、同じにおいがして当然である。



 「真輝、できたよ」と声をかければ、自室でスマートフォンをいじっていた真輝が「ありがとう」と言って立ち上がる。つらつらとついてきて、一緒に運んでくれるらしい。



 皿を持ち上げ、真輝はすんすん、と鼻先で匂いを確かめた。「お好み焼きみたい」と笑うので、俺もつられて、笑っていた。

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