第27話 鉱山都市


火炎放射器内蔵の有線式オールレンジ兵器である『フライヤーズ』は無線式の完成を持って表舞台から消えた。


「これだけ小さければ‥‥ちょっと操作が大変だけど…良いわコレ」


古代魔法を操る古の魔女の登場によって。


「熱い!ぎゃぁ――――――!!!」

「な、なんなんだお前たちはーーー!!」

「くるな!くるなー!あーーーー!!!」


そこかしこで火を噴く火炎放射器から逃げる様にこちらに向かって走ってくる盗賊。

しかしその横から


「っほ!…っは!」

「姉様!そっちに」

「はーい‥‥それ!」

「アガぁ!」

「…よっ!」

「っはぁぁぁ!」

「このアマ!ぶっこ‥‥」


そして目の前では20を超える盗賊達が美幼女と美少女と美女によって蹂躙されていた。


パルドーム公国の首都である『パルドーム』の目前で運悪く?盗賊団と遭遇してしまったのだが…


「まさか『ファイヤービット』の試運転中に遭遇してしまうとは…南無」


数日前からサイサリス用に小型化していた物が完成したのでお披露目会兼小休止をしていた所で物陰からわらわらと盗賊が湧き出てきて蹂躙されている訳だ。


「ご主人様、こちらは片付きました」

「こっちもです」

「うん、楽しかったわ」

「お疲れさん、それでどうだった?」

「連携としては問題なかったですね」

「それに私達はサイサリス様の打ち漏らしを片付けただけなので普段より楽でした」

「二人の押さえがあるから気にせずやれた」


盗賊との遭遇は偶然だったが、出発前に話していたが盗賊に襲われた時の対応についてもパルドームに入る前に一度確認しておこうと決めていた。


サイサリスの古代魔法は乱戦下では使えないし敵との距離が近すぎると誤爆の可能性もあって盗賊に攻め込まれるとサイサリスが危険になる。

なのでアドラステアがサイサリスを守りつつキレーネが突破口を作り俺が全体のサポートに回る手はずだったが‥‥

ファイヤービットのお陰で問題なく対応できることが確認できたので満足だ。


「じゃぁ小休止を挟んだら出発だ」

「「「はい」」」


とは言え今のところは積極的に攻め込むつもりはないがね。


★☆★


「ここがパルドーム公国の公都パルドームか!」


この公都は希少な金属や魔石が産出することから鉱山都市とも呼ばれ諸外国からも商人や観光客が多く訪れる。


「やはり貿易の盛んな場所はいろいろな人がいるな」

「そうね、王都を思い出すわ」

「攫われない様に注意しないとですね」

「?」


そういえばキレーネには王都での話はまだだったな。

宿への道すがら説明することにしたのだが‥‥

「一人での外出は控えて下さいね?旦那様」とキレーネからも釘を刺されてしまった。解せんぬ。


話していると宿に着いたのか結構豪華な外観の宿だった。

「ここ?」

「はい、マーガレット様が手配してくれたのがここですね」

「まぁ入れば解るわ、入りりましょ?」


サイサリスは特に気にならないのか平然と中に入るので慌てて後を追うと外見と同じく内装も結構豪華だった。


「いらっしゃいませ、どなたかの紹介はございますか?」

「マーガレット商会のマーガレット様の紹介状です」

「では失礼‥‥‥確認しました。お部屋にご案内いたします」


カウンターの執事服を着た男がベルを鳴らすとメイドさんが現れ部屋に案内された。


「こちらの部屋をお使い下さい、また御用の際はお呼び下さい」

一礼し去ってゆくメイドさんを見送り部屋に入ると中はかなり広かった。

簡易的な調理台が併設された大部屋と小さい部屋が二つ。この二つはベッドルームでそこそこ上質なベットだ。


「結構な部屋を用意してくれましたね」

「一泊で金貨が飛びそうな程豪華ですね~」

「そうなの?」

「そうです!かなり豪華ですよ?」

「まぁ質素よりは良いって事で、とりあえず荷物を置いて観光しよう!」

「私も賛成」

「はーい、じゃぁすぐ準備しますね」


備え付けの収納に荷物を収め、外出用に軽装に着替えてから公都の繁華街に繰り出した。


やはり国が違えば売っている物も違うし習慣も違うので目新しい事ばかりで散策するだけでも楽しい。

原産地ならではなのか鉱石や宝石、魔石などの値段が安く宝石の原石を売っているお店もありなかなかユニークだ。


暫く歩くと比較的小ぶりだがお城が見えた。


「アレがこの公王の住むパルドーム城ですよ」

「公王はどんな人なの?」

「そうですね‥‥何代か前の公王は名君と呼ばれていたそうですか、今代の公王は覇気に乏しく一部では宰相の言いなりの傀儡政権と言われていますし公太子も盗賊と繋がりやりたい放題とのもっぱらの噂です」

「あーつまりは腐敗政権ですね」


やっぱりどんな国でも代を重ねるとダメになるな。

国を興した初代やその子供は苦労を知っているので暴走すれば手痛いしっぺ返しが来ることは解って居るので悪政を敷かないが、孫やひ孫と代が変わるにつれて腐敗するのは必定だ。


お前は特別な人間だと言われて育った子供が我慢などするはずがないのだからな。

勿論すべての人がそう言う訳では無いが、大抵はそんな物だ。代を重ねるごとに暴走し最後には民の謀反により打倒されると言う話はよくある事だ。


「ともあれ関わることは無いだろうし、気にしない事にしよう」

「そうね」

「さ、次は何処に行く?」

「あ、ではおススメしたい場所が…」


キレーネとアルテミスの紹介で何件か巡ったあと宿に戻った。



それから数日は女性陣のショッピングの傍ら廃鉱山や浮遊石の情報を集めていた。

流石に表のお店で集められる情報には限度があったが集めた情報を精査するとやはり廃鉱山の奥に大きな浮遊石が存在しているのと、そこを召喚師を有する盗賊団『アンタレス』が根城にしている事が分かった。


更に調べてみると「アンタレス」は治安維持と称した人攫いや違法奴隷の売買などもやっているのだが、どうやら公太子とのパイプがあり事件を起こしてももみ消されているのか今まで捕まっていない。


マーカスにも迂闊に関わるなと言われているのでこちらから手を出すつもりはないが…さてどうしたもんか。

名案が浮かばないままその日は過ぎていった。



公都パルドームに来てから7日、旅を満喫していた。

潤沢な資金に物を言わせたセレブ旅は皆の満足度が高く明日は何処に行こうかとキャッキャウフフしている三人を見るのがすごい尊い。


王都でもサイサリスとアドラステアの姿にも感激していたが今も素晴らしい!

身長的にはサイサリスが一番低いのだが彼女が先頭に立って二人を引っ張ている姿が最高だ。


「尊い光景に感謝!」


と一人悦に浸っていると辺りが騒がしくなった。









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