第26話 見える!見えるぞ!


路地裏の魔道具店を後にしてその足で冒険者組合に向かい、パルドーム公国について情報を求める事にしたのだが‥‥。


所情報自体は集まったがどうにも信憑性に欠ける話しばかりだった。

『パルドーム公国は内乱一歩手前で国が荒れている!』

『盗賊が王宮を攻めて返り討ちに有った』

『隣国との国境線ではドンパチしている!俺も武勇を上げるチャンスだ!』

『俺、この戦争が終わったら、アイツに気持ちを伝えるんだ』


等とどこでそんな情報を集めてくるんだ?と思える話ばかりで全く当てにならなかった。


「仕方ない、アイツを頼るか・・・」


そう呟いて彼と会う為にマーガレット邸に足を向けた。


マーカスに面会したいと屋敷のメイドさんに確認を取っている間、辺りを見回すと

玄関ホールの一番目立つ場所に魔装デビルアーマーを着こみ聖剣と魔剣を装備した姿のマーカスの像が作られていた。


この像を自律行動可能な兵器に魔改造する案を本気で提案すべきか考えていると目的の人物が姿を現した。


「よう」

「これはこれは領主様~」

「やめてくれ。実質は代官が収めて居る様なもんだし俺はある意味名ばかりだからな」


オーキスにそう言いながら頭を掻くのはつい先日『男爵』と叙されこの街の領主となったマーカスだ。


余談だが貴族の仲間入りした事で新しく家名を名乗る事を許された際の候補に『エターナル・デス・ドライ』を提案したが却下されてしまったのは記憶に新しい。



「それで?今回はどうした?」

「パルドーム公国に行こうと思ってるんだが、戦争が近いってホントか?」

「特にそんな話しは聞いて無いが・・・・・・あ、公国付近に大規模な盗賊のアジトが有るぞ?なんでも手練の【召喚師】が居るって噂だ」

「【召喚師】か・・・・・・」


召喚師とは読んで字の如く契約した人や魔獣等を召喚し使役する人達の事で一説には天使や悪魔も召喚出来ると言われているのでどの国でも重宝される人材だ。


(しかし、そんな召喚師が盗賊の一味とは・・・もっとエリート出世コースが有っただろうに酔狂な奴だ)



「とは言え、普段は賊のアジトに居るらしいから無闇に近付かない方が賢明だ」

「そりゃまぁ用が無けりゃ俺だって近付かないぞ?」

「いやいや、オーキスなら散歩気分でアジトに行きそうだからな?」

「そんな事はない・・・・訳ではないが・・・まぁソレはともかく他に何かないか?」

「露骨に話しを逸らしたな?・・・・・・まぁいい。他は・・・・・・」


色々と話しは聴けたが浮遊石が産出されると噂の鉱山の話しは殆ど無かったのが残念だったが、パルドーム公国での滞在先の紹介とかしてくれたので収穫としてはバッチリだ。


「じゃぁ暫くはパルドームに居るんだな?」

「そこまで長居するつもりでは無いけがそこそこは滞在するつもりだ」

「そうか、ならまた家の警護はしておくよ」

「良いのか?」

「あぁ、あ!ただ魔道具の納品についてはマーガレットにしてくれ」

「あー了解。こっちの予定が決まったらもう一回来るわ」

「ああ、それで頼む」


関わりが有る人が増えると気軽に遠出するのも難しいものだな〜とマーガレット邸を後にした。


その日の夜、サイサリスとキレーネ、アドラステアにパルドーム公国へ行く話をしていた。


「パルドーム公国ですか?」

「ああ、なんでもこの浮遊石が産出する鉱山があるらしくてな、俺としては是非とも行ってみたい!」

「そう…私は問題ないわ二人は?」

「私も問題ないですよ」

「私は…ん~どうしましょうか?」

「どういう事?」

「必要最低限の荷物だけでココに来たので長旅の用意が整っていないので…」

「なら問題ないわ、アドラ」

「あー姉様?旅行に掛かる費用はすべて経費で落ちますよ?旅の服が必要だからと言う理由でもOKです」

「行きます!」


やはりお金の力は偉大だ。

先程まで困り顔していたキレーネもニコニコ顔で何買おうかなー?とホクホク顔をしているのだ。


「じゃぁ旅支度が出来たら出発ってことで、あ、そうだ。公国で滞在先はマーカスが用意してくれるそうだから後で確認頼む」

「かしこまりました旦那様」


公国行が決まったがどの程度滞在するかなども改めて話し合わないといけないのだが、そこは我が家のスーパーメイドさん達に丸投げして通信機の改造と新型ネタ装備の開発にいそしんだ。



★☆★


パルドーム公国へはこの街から馬車で10日かかる。

途中に大きな湖があり景観が綺麗な事から観光地になって居て人が集まる。しかし人が集まるという事は盗賊も集まる様で俺達の乗る馬車の少し前に10人程の盗賊が立ち塞がった。



「ヒャッハー!!逃げる奴は盗賊だー!」


長旅で溜まったストレスを発散する機会が向こうからやって来たのだ。

このチャンスを逃す訳には行かない!と喜び勇んで馬車を飛び出したオーキスは浮遊石を使った新型ネタ兵器有線式ファン◯ルの性能試験を行っていた。


「待て!待ってくれ!ギャァー!」

「た、助けて!」

「熱い!熱い!熱い!」

「横だ!横に居るぞ!・・・は?上?なに言って・・・ギャァーー!」


「フハハ!!見える見えるぞ!俺にも見える!」


何処かで聞いた事のあるセリフを叫びながら発狂する姿にドン引きするキレーネが後ろでアドラステアと何かを話しているがモーマンタイ!


「行け!ファン〇ル!!!」


浮遊石に火を噴く魔道具を取り付けた物を糸で操るだけの簡単な作りだが浮いているので操作が非常に大変なのだ。

変態博士の極めた魔力制御力を持ってしても同時に操作出来るのが3基が限界だ。しかし全周囲攻撃が存在しない世界の盗賊など相手にもならず既に『コンガリ焼けました♪』状態だ。


オールレンジ火炎放射でコンガリ焼いた後に所持金を回収したかったが、火力が強すぎて所持品もコンガリ焼かれていて燃え滓になっていた。


「無念!」


これならいつも通り首を狩った方が良かった気がするなーと思いながら反省しているとサイサリスも興味を持ったのか有線式ファン〇ル――もといいこんがり焼けるので『フライヤーズ』と名付けた――を貸したところ、なんの苦労もなく6基を同時操作していた。


しかし魔力で生成した糸だが流石に6本を独立させて動かすと絡まるのでは?と疑問だったが、サイサリス曰く

「私の場合は浮遊石が浮いている空間ごと魔力で無理やり動かしてるから」と言っていたので試したが‥‥


「っく!ナチュラルではコーディネーターには勝てないのか!」


無理だ。あきらめよう。努力とかの問題じゃ無いわコレ。


理屈は解ったけど消費魔力が激しくて1基飛ばすだけでもかなりの消費になる。

なので俺は大人しく有線式で頑張るしかないと思いつつ「もう少し小さければもっと飛ばせるわ」とニュータイプが言うので小型化する事にした。


「短い天下だったぜ‥‥」

先の戦いで盗賊をこんがり焼いたフライヤーズを撫でながら静かに涙が零れた。





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