第25話 二度ある事は‥‥?
王都からの帰り道は襲われる事も無く平和な物だった。
正直な事を言うと試したい事が有ったので是非とも盗賊さん達の襲撃を期待したのだが出て来なかった。
小休憩の時にこれ見よがしに辺りをふらついて襲われる様に仕向けたのにも関わらず、誰も寄って来なかった。
そしてサイサリスとアドラステアに説教を受けて、家に着くまで下車禁止を言い渡されていまし結構ストレスだったが、新型ネタ装備の開発を始めたらあっという間に家に帰ってきた。
「フハハ!私は帰ってきた!」
「まずは掃除ですよー?」
「ウーッス!頑張る…ッス?」
体育会系のノリで家に入ると何故か家の中にアドラステアが居た。
「え?」
振り向くとアドラステアいる。
で前を向くとアドラステアが居る。
「ど‥どど…ど」
「「ど?」」
「キャー――!!!ドッペルゲンガーだぁぁ!!!!!」
アレか?無慈悲に盗賊を滅菌処理しまくったツケが回ってきたのか?と見当違いの事を考えながら俺の意識は途切れた。
「‥‥っは!」
寝不足でまさか幻覚を見るとは…これを機に生活習慣を見直すか?
とりあえず体を起こし辺りを見回すと主寝室だったのでドッペルゲンガーの幻想を見て気絶→寝かされていたという訳だ。
それにカーテンが引かれているので恐らく時間帯としては夜だろうなと思っていると誰かが入って来た。
「失礼します‥‥ああ、起きてましたか?」
「ああ、しかしさっきは驚いたぞ?」
「驚いたのこっちですよ~人の顔見て倒れられるとは思いませんでしたよ?」
「そりゃ悪かった」
アドラステアの言う事も最もなので素直に頭を下げて謝罪する。
「わわわ!きゅ、きゅうに頭を下げないでください!」
「?」
アドラステアに頭を下げることは多々あるはずなのになんだその反応は?
しかしよくよく見るとなにかが違う様な気が…気のせいか?
アドラステアらしくない言動に若干違和感を覚えたが寝不足が原因だろうと思いスルーしてリビングに向かうことにした。
そして
「キャー――!!!ドッペルゲンガーだぁぁ!!!!!」
又しても気を失った。
★☆★
「改めまして私はキレーネ。アドラステアの姉です」
「‥‥双子ですか?」
「よく言われますが違います。私の方が2つ年上です」
「そうですかい」
「しかし聞いてた通りの人でしたねアドラ」
「私も驚きましたよ。まさか姉様がこの家の管理をしていたとは」
二度目の気絶からは直ぐに復帰できたが今でも混乱中だ。旅行から帰って着たら同じ顔のメイドさんが一人増えてるんだぞ?
しかも自分でも驚きだが二度も気絶するとは思ってなくて状況が理解出来てない。
声質は流石に違うのでちゃんと意識していれば識別は問題ないが顔立ちや髪色が似ているので薄暗いところでは判別が難しい。
アドラステアより色が薄いプラチナブロンドで髪色で並べるとサイサリス<キレーネ<アドラステアの順で金髪に近くなる。
「ところでキレーネさんはどうして此処に?」
「キレーネで結構ですよ旦那様、実はですねつい最近まで勤めていた所から暇を出されまして実家に戻っても直ぐに追い出されそうなので妹の様子見がてらにあわ良くば雇ってもらおうかと思って来ました」
うん。この姉にしてこの妹有だな。
しれっとした顔で乗り込んでくる辺りが血の繋がりを感じさせる。
「えーっと‥‥その暇を出された理由とは?」
「私、朝が弱いので基本日が完全に上ってからじゃないと目覚めないんですよね~なので前お世話になっていた貴族方からも何度か苦情が来たのですが…」
「睡魔に負けて怒られてクビになったと」
「平たく言えばそんな感じですね~」
「全く姉様は‥‥メイドなのですから朝起きれなくてどうするのです?」
「アハハ~まぁそれはともかく朝は弱いですが私はアドラちゃんよりも強いですよ?ここを守っていた騎士であれば負けないくらいですね」
なんと!このお姉ちゃんはバリバリの武闘家だったのか!しかもアドラステアより強いって‥‥メイド止めて冒険者になればいいのでは?と思うのは俺だけだろうか?
「なので是非とも雇って下さい。家事も料理も万能ですよ?私」
うーむ世話になているアドラステアの家族なので雇うのは俺としては問題ないが今は仕事面ではアドラステア一人でも十分なのでさてどうしようかと思っているとサイサリスが腕をポムポムと叩く。
「ん?」
「私は賛成よ。アドラよりも強いなら是非欲しい人材だわ」
「え?そこ?」
「当然よ。先日の王都の事でもう一人動ける人が居ればと思ってたし」
「あ~そう言う事ね」
そう言われると納得せざるを得ない。
攫われた張本人なので何とも言えない部分もあるが確かにアドラステア一人ではお荷物二人を守ながらは厳しいだろう。
まぁアドラステアにとっても赤の他人より気心知れた姉の方が変に気負わなくても済むだろうしな。
「アドラステアはどうだ?」
「私も賛成ですね、ご主人様の前で言うのはアレですが私より強いですしこの先私一人では限界が来そうなので、私からも是非前向きに検討してもらえればと」
「そうか‥‥なら採用で」
「わーい。じゃぁ早速荷物を持ってきますね~」
因みにキレーネもちゃっかり住み込みで働くつもりらしく二階の空き部屋がすべて埋まる事になった。
ともあれ部屋開いてて本当に良かった。
そして荷物を持って戻って来たキレーネの事はアドラステアに任せて翌日はキレーネの実力を確かめる為に模擬戦を行うことにした。
そして翌朝、キレーネに起こされた。
「旦那様、奥様朝ですよ~」
「…んにゅ」
「…んぉ?」
「おはようございます。朝食の準備は出来てますのでサイサリス様はお仕度を」
「おはようキレーネ、準備するから手伝って」
「かしこまりました。ところで旦那様は?」
「オーキスならほっといても自分で起きるから平気よ」
「そうですか。では」
部屋を出てゆく姿を寝ぼけ眼で見送る…
(スルーされて悲しくなんてないんだからね!)
勿論サイサリスの言う通りなので文句はない。てか場合によっては寝ない時もあるし逆に夜まで起きない時もあるので起きなければ放置で良いと言っているので対応に問題はない。…ないが‥‥心が寂しいのは何でだろう。
心に寂しさを抱えたまま朝食を終え一通りの準備が整ったところで模擬戦を行うことにした。
とは言っても単騎で大魔法をぶっ放すサイサリスは除外だ。
全力を出されたらこの屋敷が爆心地となりかねないので参加するのは俺とアドラステアとキレーネの三人だ。
「ではまずご主人様と姉様ですね…殺傷は無しですからね」
「はいよ~」
「わかってますよ~」
「では‥‥!はじめ!」
「‥‥は?」
アレ?
アドラステアの始めの合図で構築した糸で巻き取ろうとしたらなぜか組み伏せられていた。
「い、いつの間に!?」
「私の勝ちですね、旦那様?」
「何が起きたのか全く分からなかった!」
「理屈は簡単ですよ?開始の合図と共に超高速で肉薄して仕留めただけですから」
「簡単じゃないないからソレ!」
とは言え一回で実力を測れる程の技量はないのでしばらくは模擬戦に付き合ってもらう事にした。
しかし結局一度も迎撃が出来ないまま地面に転がされた。
糸攻撃も知らないまでも対処法を即座に作戦に組み込む…「ぬぁぁぁ!!!」と気合を入れたが残念な事に言いよう遊ばれて終わった。
「では次はアドラステアとキレーネの姉妹対決だな」
「はい」
「はーい」
結果はキレーネの圧勝だった。
なので今度はサイサリスの身体強化魔法でブーストした状態で勝負したが結局アドラステアが負けた。
「‥‥ふぅぅ~流石姉様ですね」
「いやいや何あの身体強化って。サイサリス様!私にもかけて欲しいです」
「わかった」
こうしてお互いにブーストがかかった状態での勝負は自力の差で危なげなくアルテミスが勝利した。
「ふふーんこれでも私は大抵の武芸は収めてますからね!」
と嬉しそうな顔で語ってくれていた。
こうして我が家に新戦力としてアドラステアの姉、キレーネが加わった。
因みに弓のセンスは皆無だった。
◇◆◇
キレーネを雇い入れてから数日、【通信イヤリング】の改良を進めていた。
通信する相手が一人増えたので単純に一人当たり三個の宝石を身につけなければいけないので出来れば一つにまとめて欲しいと要望が出たからだ。
なので改良に精を出したのだが‥‥
「ぬぅぅアイディアが出ない」
発信機の宝石が一つに受信機の宝石が三個を嵩張らない様にするのが結構大変で大きさ的にイヤリングにするのは無理だった。
なので他のアクセサリーに偽装させたいのだが首回りに付ける物では限界がある、ならばアンクレットとかにすれば良いかとも思ったが、どういう訳か顔周りから離れると音が聞こえなくなる。
「仕方ない‥‥気晴らしに散歩でもしてくるか、サイサリスはいるかな?」
どうせ気晴らしに行くなら街デートに誘おうと思い部屋を出てリビングに行くとテーブルの上にメモがあった。
旦那様へ
サイサリス様とアドラステアと一緒に買い出しに行っています。
――キレーネ
「買い出しか‥‥まぁぶらぶらしてれば会えるだろうしサックと行くか」
一度部屋に戻り外出の準備を整えて街に繰り出した。
街の中心にある繁華街を目指して進むんでいる時に王都で買った浮かぶ石を行きつけになりつつある路地裏の魔道具店のおっちゃんにお土産として渡そうとしていた事を思い出し急遽行先を変更して路地裏を目指した。
「おっさーん?居るー?」
「ん?居るぞ・・・」
「王都で珍しい物買ったからお土産」
「ほう。コレは珍しい・・・【浮遊石】か」
「ありゃ既にご存知だった?」
「その筋では有名だからな。しかしここ最近では市場に出回ってなかったが?」
「王都の露店で買った。露店商が言うにはパルドームから来たってよ」
「パルドームか…ならあそこかもしれんな…」
「あそこって?」
「パルドーム公国の西に鉱山がある、大分昔は鉱石や魔石とかが採掘出来ていたが…今では廃棄されていると聞いた」
「そうか…(廃鉱山…水源に当たって採掘不可能にでもなったか?)」
「ともあれ、ワシが知っているのはこの程度だ」
「情報助かった」
「ああ」
言いたい事だけ言うとお土産の浮遊石を抱えて奥に引っ込むおっさんを尻目に少し店内を回った後に店を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます