第24話 街への帰還

露店で『浮遊する石』と『ペアで振動する宝石』を買い占めホクホク顔で宿に戻るとマーガレット達が面会を求めて来たので出先から戻ったばかりだが会う事にした。



「式も無事終わり晴れて貴族の仲間入りする事になりました」

「おめでとうございます」

「あと商人の一斉監査で証拠が無くて糾弾出来なかった一部の貴族が処断されまして、陛下もとても喜んで居ました」

「それは良かったですね」

「はい、そして予想以上の結果となった事とコレまでの活躍を合わせた結果、当初の準男爵から1つ上がり男爵位を賜る事になりました。」


「「「え!?」」」


(男爵!?流石にそれは驚くよ!貴族になるのもかなり大変なにのいきなり男爵って異例すぎない?)


他の国の事は知らないがこの王国での貴族階級は上から公爵→侯爵=辺境伯→伯爵→子爵→男爵→準男爵となっており準男爵を賜るのも簡単な話ではないのだが…


「お気持ちは分かります、流石に何かの間違いかと思ったのですが・・・・・・何でもポムポム商会の件である大物貴族が関わっていたそうで」

「実はその大物貴族様は王位簒奪を試みていた所でポムポム商会が失脚してその煽りで悪事が露呈して芋蔓式に断罪されたとかですか?」

「その通りですが・・・ご存知でしたか?」


「いえ」

(おいー!なんだそのテンプレ主人公の成り上がりストーリーの一幕は!都合良すぎない?てかこのままだと腹いせに暗殺者を送り込まれそうだけど大丈夫!?)」


「そうでしたか。ともあれ無事に王都での用は済みましたので、数日後には街に戻りますす」

「分かりました」

「最後に褒賞として希望していた亜空間収納袋ですが無事に3つ賜りましたので、後程お渡しします。」

「ありがとうございます」


これで持ち回りを気にしなくても良いのは助かるなと思いつつ残りの滞在時間をどう過ごすかを思案する事にした。


因みに今住んで居る街だが正式にマーカス男爵が領主に就任する事が決まり、街の中心にフル装備姿の像が作られるらしい。

なのでコッソリ魔改造して有事の時に自律行動出来る様にするのもアリか?と思ったのは秘密だ。



面会の後、約束通り亜空間収納袋を受け取ったので早速全員に配った後、ペアで振動する宝石で小型通信装置を作れないか試していた。


「ん〜音は空気の振動だから・・・この宝石固有の振動を伝える流れに載せればとも思うけど・・・受信側の状態を確認しときたいし・・・・・・あーサイサリス?少し協力して欲しい」


「少し待って・・・・・・はい、良いわ」

「この宝石に魔力を込めてみて」

「露店で買った宝石ね・・・込めるわよ?」

「宜しく」


サイサリスが送信側として魔力を込めると手に持った宝石がブルブル震える。


「・・・・・・なるほど!コレなら少し加工すれば行けるはず!」

「?どうしたの?」

「ああ、協力ありがと!お陰で目処が立ったよ」

「そう?なら良かったわ」


やはり観察は実際に起動している物を見るのが一番良い。

コレはマジで出来ちゃうかも知れない!とはしゃぎながら本格的に制作に取り掛かった。



それから2徹して帰還当日の朝に遂に試作品が出来た。



「おはよー!2人とも!遂に完成したぞ」

「それはそれは、では早速帰還の準備をお願いします」


(っく!どうしても王都にいる間に済ませたかったからアドラステアやサイサリスの忠告を無視したからか2人の機嫌悪い!)


「ハハハ!とは言えこの効果を知れば目が飛び出すと思うぞ!まぁダメにした宝石の数に目が飛び出るかも知れないが・・・・・・」

「は〜それで?出来たの?」


うーむ。サイサリスの視線も冷たいので巻きで行こう。


「とりあえずこのイヤリングを付けて」

「わかったわ」

「それじゃ俺が宿の前に行くから少し待ってて」


そう言うとオーキスが部屋を飛び出して行くのでサイサリスは窓を開けて彼が宿から出て来るのを待った。


暫くして姿が見えたと思ったら彼の声が突然聞こえてきた。


『おーい。聞こえるー?聞こえたら手振ってくれー』


言われた通りに手を振るとまた声が聞こえた。


『話す時は渡したら宝石に魔力を込めながら話してみて?』

「どう?聞こえる?」

『おー!成功成功!コレなら多少離れてても話しが出来る!よし!なら次は机に置いてる紫の宝石をアドラステアに渡してくれ』


(えーっと・・・・・・あ、コレね)

「アドラ、コレを耳に付けて」

「はい」


「オーキス?アドラに渡したわ」

『オッケー、今度はアドラステアに話しかけるから』


そう言うと直ぐにアドラがオーキスと話し始めた。


その様子を見ながら私は驚いていた。

この宝石の存在自体は知っていたがまさかその振動に声を乗せて遠くに飛ばすと言う考えは無かった。

柔軟な発想力を持った彼ならではの魔道具なのだと思っているし、素晴らしいとも思うが徹夜するのは考え物だ。


彼のやりたい事を支えたいと思う反面、体調を崩す前に辞めろと言いたい。


「全く・・・・・・目が離せないんだから」


宿の前で1人楽しそうにしている彼を見ながら今度は私も混ぜて貰おうかなと思っていた。



★☆★


ペアで振動する宝石を加工して作り上げた【通信イヤリング】は青い宝石が付いた方をサイサリスに紫の方をアドラステアに渡した。

しかし今のままだとサイサリスとアドラステア間でのやり取りが出来ないので緑色の宝石かま付いたイヤリングを2人に渡した。


「見た目はチグハグだけどこれで全員と遠距離会話が出来るな」

「ええ、コレは本当に画期的ね、ただ・・・」

「ただ?」

「使用できる範囲がわからないのと、1人でぶつぶつと話す危ない人に思われそう」

「あー盲点だったぁ〜」


確かに。

前世ではワイヤレスでハンズフリー会話は当たり前だったから街中で話しをしてても怪しまれる事はなかったが、ここは異世界だ。


通信手段が発達していない世界で同じ事をす怪しまれるのは当然だ。


「で有れば、人気のない所で話すしかありませんね〜」

「やっぱりソレしかないか・・・」

「そうですよ・・・って!もう出発ですね!忘れ物は無いですか?ご主人様」

「大丈夫。多分、大丈夫」


性能試験が終ったのですぐさま帰還の準備に取り掛かり、マーカス達と合流し馬車に乗り込んで出発の時を待っていた。


「出発だ!」


マーカスの号令で走り出す馬車の中でサイサリスに膝枕してもらいながら帰路に付いた。


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