第19話 防具ですか?いいえ違います、兵器です。
王都への観光が決まった後は出発に向けた準備を我が家のスーパーメイドであるアドラステアを中心に行っていた。
というか金を渡して丸投げしたが正しい。
「全てはこれを完成させる為だったのだー!」
準備と言っても亜空間収納袋とリュックがあるので問題は無いと思っていたが、女性陣からするとお出かけするならいつもと違う服がいい!との事で何日にも渡って買い物をしていた。
幸い資金には余裕が有るし不足するなら盗賊と言う名のお財布から卸せばいいだけなので準備は丸投げして最高のネタ装備を作っていた。
完成したのはマーカスが装備する鎧だ。
少し値は張ったがフルプレートの鎧をオーダーメイドで作って貰い、それを改造したのだ。
「ククク!恐らく度肝抜くだろうなコレ」
コンコンと全身を黄金に光らせる鎧を軽く叩きながら新機能を使う事態が訪れる事を願っていた。
★★★★★★★★
そして出発当日、マーカスは黄金に輝く鎧を前にして項垂れていた。
「これ付けるのか?」
「ああ、物凄い新機能が付いているからな。恐らく不意打ち対しては物凄い効果を発揮すると思う」
「‥‥そうか」
「不意打ちに対する守りとは凄いですね!流石オーキス様です!」
マーガレットが大喜びしているので彼がこの鎧を装備するのは時間の問題だろう。因みに機動戦士兜も旅の間に改造する予定だ。
「判った。付ければ良いんだろ?」
抵抗するだけ無駄だと判断したのかマーカスは大きなため息をついて鎧を受け取った。
「ん~名前でも付けるか?」
「不要だ」
「よし!ならば『魔装デビルアーマー』にしよう!聖剣エターナル・デスに魔剣エターナル・デス・ツヴァイに魔装デビルアーマー!」
「‥‥」
「名前だけ聞くと凄い強そう」
「‥‥」
「まぁ名前はともかく性能は保証するよ。ネタ装備の名に恥じない性能だから!」
「不安しかないが‥‥‥まぁいい出発だ!」
マーカスの号令で走り出す一団。
今回の旅のお供は元衛士隊も一緒だ。
彼らは昔からマーカスに仕えて来た部下なので忠誠心が厚く、貴族になることで衛士隊長を辞めるマーカスの後を追うように衛士を辞め、マーガレット商会の私兵にジョブチェンジした。
その心意気に敬意を表し盗賊から強奪した盾をプレゼントした。
『サイサリス達も居るし、防衛力は強化して損はない!』そんな事を思いつつ荷台で機動戦士兜の改造を進めていた。
王都までは馬車で大体4日の距離にあり、途中の街で補給と馬の交換を行うので実質は5~6日かかる。
街や王都の周辺に賊は定期的に駆逐されているが、街から離れると途端に危険になるので注意が必要だ。特に森の出口辺りは警戒が一番緩むので奇襲を受けやすい。
そしてそのセオリー通り奇襲を受けた。
受けたのだが‥‥‥
「「「「「「‥‥‥」」」」」」
「ハハハハハ!素晴らしい威力だ!よし今のうちに開けた場所に逃げるぞ!!」
「お、おう!総員走れー!」
唖然とした表情の盗賊達を後目に森を抜けて見晴らしのいい平原に出る。
すると横に並んだマーカスが先程の『爆発』について問い詰めて来た。
「あの爆発は何なんだ!?」
「あれ?あれは新兵器『リアクティブアーマー』だ!」
時間は少し遡る。
見晴らしの悪い森を一気に掛け抜けもう少しで出口だと気が緩んだ一瞬の隙に先頭を走るマーカスに木の陰から躍り出た男が剣を突き立てて来たのだ。
完璧な奇襲で誰もがマズイ!と思った矢先、鎧が大爆発を起こした。
激しい音と共に奇襲を仕掛けた男は爆風をもろに受け吹き飛び、木に激突して息絶えた。
そして唖然とする周囲に指示を出して、戦いやすい広い場所に移動したという訳だ。
「り、リアクティブアーマー?」
「所謂、爆発反応装甲で鎧に衝撃を受けた瞬間に自ら爆発することによって着弾のエネルギーを相殺して内部への侵徹を妨げる素晴らしい装甲だ」
「爆発するのかよ!この鎧!!!」
「一応一定以上の衝撃を加えないと爆発しないから普通にしてれば問題ないけど、落馬とかすると反応するから注意が必要だ」
「そんな危ないもの着させるな!!!」
「ごもっともな話しなんだが魔法で指向性を持たせたから使用者は安全だよ?だけど周りは無差別に被害が出るけどな!それに余剰エネルギーを反対側から放出す事で反動を相殺する仕組みを組み込むのが大変だった」
「そう言う事を言いたいんじゃ!」
「あ、言い忘れてたけど一回発動すると再チャージしないと使えない仕様だし次は無いから注意ね!」
「そう言う事は事前に‥‥‥えぇい!ともかく!今は盗賊だ!20は居るぞ!!」
相手はどこの誰は判らないが結構な数を集めたらしい。
とは言え、新装備『デビルアーマー』の動作も確認出来たからそろそろご退場頂こうと思い一歩前に出ようとしたところでサイサリスに止められた。
「私がやるわ」
「え?」
「これだけ開けた場所なら問題ない」
そう言うなり目を閉じたかと思ったらアホみたいな量の魔力が彼女の体から迸った。
「そ、総員退避ーーーー!!!!」
嫌な予感がヒシヒシとしたので後方に下がった。
全員が後ろに下がったタイミングで迸っていた魔力が集約され彼女の口から理解できない言葉が紡がれ―――
『xxxxxx xx xxxxxx xxxxx。』
―――平野の一部に氷河期が訪れた。
拳程の大きさの雪玉がフワフワと盗賊の目の前に舞い落ちた瞬間に激しい閃光が弾けた。
閃光が収まり目を開くと平野の半分程が氷で覆われ、盗賊も全員氷のオブジェに早変わりしていた。
「「「「「‥‥‥」」」」」」
「‥‥ふぅ、こんなものね」
『いい仕事した~』と言った表情のサイサリスに思わず突っ込んでしまった。
「いやいやいやいや!古代魔法ってこんな理不尽なの!?」
勿論同じ規模の現象を現代魔法で起こす事は可能か不可能かだけで言えば可能だが、同じ事を一人で同じ事を再現するのは無理だ。それこそ転生した勇者様とかチート持ちの賢者様とかでないと再現は出来ないだろう。
「久ぶりだから調整を間違えたけど」
「そ、そうか…(コレはアカンやつだ!怒らせたら俺がオブジェになる!!!)」
「それで少しは貴方の役に立てるかしら?」
「ウン、スゴク タヨリニ ナルナー。(いやいやいやいや!リアルワンマンアーミーじゃん!どれだけ撃てるか知らないけど・・・・マジで戦略級魔法だよ!)」
「なら良かったわ」
うーん。素敵な笑顔だけどね?サイサリスさん。
「コレいつ溶けるの?‥‥っておい!何で顔を背けるんだよ!?え?嘘だろ?マジで氷河期なの!?」
「うそだろーーーーーー!!!!」
平野にオーキスの声が虚しく響いた。
因みに、一度発動した魔法で起こった事象は解除不可能なのは現代魔法と同じだったので頑張って溶かしてたのだが、普通の氷の何倍も硬いので溶かすのにかなり時間が掛かるのでオブジェごと王都に運搬する事になった。
最初は氷の塊を連結して馬に引かせたのだが、地面の凹凸に引っ掛かり上手く進まなかったので衛士隊の皆さんに岩と木を取って来て貰い『整形』の魔法で荷車に加工して運搬する事になったのだが…。
その光景が自動販売機を積んでるトラックの荷台に見えて少しだけ故郷が恋しくなった。
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