第18話 お誘い

「ご主人様、マーガレット様よりお手紙が届いております」

「はいよ」

(なんだろ?ヒーターも滞りなく納品してるし特に問題はずだが…)


そう思いながらアドラステアより手紙を受け取り中を拝見すると


『今度商会立ち上げの時にお世話なった人向けのパーティーを開くので是非参加して欲しい』と書いてあった。


面倒だし行かない選択を取りたかったが、オーキスの作った魔道具が発端でマーガレットが商会を立ち上げたので参加しない訳にはいかない。

とは言えパーティーなんぞ参加した事がないので、どうしようかと思って居たところにサイサリスが戻ってきたので相談する事にした。


「マーガレット様からパーティーに来いとお誘いが来た」

「判った。準備するわね」

「あーその…パーティーって参加した事あるの?」

「捕まる前に何度か参加した事が有るわ」


(マジっスか!?てっきり初参加で不安だから今回は見送るわって言って貰えると思っていたがアテが外れた!ならばアドラステアはどうだ!?)


「アドラは!?」

「そりゃ前の奉仕先が貴族でしたからねパーティーなんて日常茶飯事でしたよ?」

「期待を裏切らないスーパーメイドめ!今だけはお前の優秀さが妬ましい!」

「‥‥?もしかしてご主人様、パーティーの経験がない?」

「っふ、俺の様な高貴な男は一人の時間を大切にするものさ」

「ハブられたんですね・・・・お可哀そうに」


エプロンドレスの裾でわざとらしく目元を拭うアドラステアに素知らぬ顔でお茶を飲むサイサリス。


「ハブられた言うな!ああ、そうだその通りだ!俺はボッチだったからパーティーなど無縁だった!」


ロリコン博士は勿論の事生前の俺も暇さえあれば熟女ハンティングに精を出していたので友人と呼べる人は少なかった。

まぁその友人も同じ穴のムジナだったんだがな‥‥はははー。


「とは言え出ない訳にも行かないから…仕方ない準備するか」

「では参加って事で返事を出しておきますね~あとパーティー用の服って持ってます?」

「ない!」

「ですよね!早速今日買いに行きましょう!」

「はーい」

「勿論サイサリス様も」

「ええ」


異世界に来てからなのはアレだが人生初のパーティーに赴くことになった。




そしてパーティー当日、マーガレット邸の大きな庭には沢山の料理が並び各々がお酒や食事を楽しんでる中一人の変態は壁際でショートしていた。


「んー無理。このパリピ空間に居るだけでライフが無くなる」

「大丈夫?」

「うん、無理」

「…そう」


例の魔道具の製作者だと紹介されてしまったので挨拶に来る人を捌くだけで一苦労で本当に疲れていた。

付き添ってくれるサイサリスが唯一の癒しだぁ~と思いながら周りを見渡すと一組の男女が近付いてきた。


「よ、元気か?」

「見てたろ?あの群がり様を」

「ハハハハハ!俺なんてもっと多いぞ!誰かさんのお陰でな!」

「ハハハハハ!ドンマイだ!」


2人して何かを忘れる様にから笑いをしていると横に居るサイサリスが姿勢を正してマーガレットとしっかりと挨拶を交わしていた。


「この度はお招き頂きありがとうございます」

「いえいえ、いつもお世話になっていますから・・・それで彼女はどうでしたか?」

「彼女?・・・・ああ、アドラステアですか?」

「ええ、紹介した手前気になっていまして」

「私達にはもったいないくらい優秀なメイドですよ、彼も大変喜んでいます」

「それは良かったです!」


うーん出来るロリババアは素敵ですねぇ~とサイサリスを目で追っていると『熱血衛士長に挨拶させろ』と目で訴えて来たのでオーキスもマーガレットに挨拶すべく立ち位置を変わった。


「衛士長様、お久しぶりです。盗賊の拠点以来でしょうか?」

「おお、肌艶も良くなったな!健康そうで良かったよ。改めて俺は『マーカス』聞いているとは思うがオーキスには大分世話になってるぞ」

「いえいえ、こちらも毎度ご迷惑をおかけしていますのでお気になさらず」

「はっはっは!やっぱりしっかり者だな!今後ともアイツの事頼むぞ!」

「ええ、お任せ下さい」


その後もそつのないやり取りで世間話をこなし熱血衛士長――マーカスが去り際に『後で話しが有る』と呟かれたので厄介事か?と身構えてしまったが、考えても仕方ないので取り合えずは料理を楽しむことにした。



因みにサイサリスとの関係は『婚約者』となっているがこの世界では早い人だと生まれる前に相手が決まっていることもざらにあるので、全く疑われなかった。

とは言え大抵の人からは微笑ましい目で見られたがな。



そして夜、久しぶりにマーガレット邸のテラスにマーカスと二人でワインを楽しんでいた。

深夜くらいしか時間が取れないとの事で一泊させてもらう事になりサイサリスとアドラステアは既に就寝している。


「それで、話しって?」

「実はなこの前捕まえた『ハウンド』を覚えているか?」

「ハウンド・・・・・あぁあの魔剣使いの?」

「そういつだ。で奴の魔剣なんだが実は何代か前の王家が盗まれた品だそうで、奪還した功績で叙爵されることになった」

「はぁ!?叙爵!???」

(え?この人そんなに凄い事したの?あのやる気の無い門番が叙爵して貴族の仲間入りって…物凄いサクセスストーリーだ!実は転生した勇者でした!って事無い?)


「俺も驚いているんだが…まぁそれはいい。それで叙爵の為に今度王都に行くんだが道中に賊の襲撃が予想されると情報が有ったんだが」

「その護衛に一緒に来て欲しいって所か?」

「ああ、そうだ」

「(ふむ王都か…。王都と言えば国の中枢、最先端の技術や知識がある、一度行ってみたいと思っていたが渡りに船だな)話しは判った。俺としては問題ないが一応サイサリスとアドラステアにも相談してから返事するって事でいいか?」

「ああ、それでいいぞ。あと不在の間は衛士隊で家の警護はするから安心しろ」

「それは有難い!」


(家の警護に人員を割いてくれるなら心配事も一つ減るし、プチ旅行だな!)



王都までの護衛兼観光の誘いを受けた翌日、早速二人に相談することにした。

「王都?」

「ああ、一応護衛が目的だがマーカスの叙爵が終わるまでは観光してて良いって話しだ」

「なら、問題ないわ。私も行ってみたかったし」

「私もです!家の警護にも人員を割いてくれるのが素晴らしいですね!」

「(二人とも乗り気か…ならまぁいいか)じゃあOKってことで」

「ええ」

「はーい、帰ったら早速準備しますね!」



こうして王都行が決まり、ある意味新婚旅行だなと伝えるとほんのり頬を赤くして顔を背けるサイサリスの顔がとても可愛かった。

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