第8話 巣立ち
北の盗賊アジト襲撃の一件でかなりの枚数の金貨が手元にあるのだが相変わらず孤児院の3畳程の個室で生活していた。
理由は簡単だ。
我が半身?であるロリコン博士がここから離れるのを拒んでいるからだ。
俺としては資金も溜まったので自由に出来る拠点を構える事を考えて居て、近いうちに物件探しをしようと決めてはいるものの気が付くと幼女達と戯れている‥‥死んだ後も行動に影響を及ぼすとは完全に呪いだぞこれ。
とは言え段々とシスターお姉ちゃんの干渉が厳しくなってきたのでそろそろ自由に出来る拠点を探す時期に来たのかもしれない。
なのでロリコンの怨念を振り切り巣立ちを決意したその日の夜にシスターお姉ちゃんに相談した所、寂しそうな顔をしつつ巣立ちを認めてくれた。
実はこの孤児院では一人でやって行ける様になると出て行いくのが習わしだ。
働けるのに孤児院に居座ると孤児院の負担になるので厳しい様だが12~13歳で皆独り立ちするそうだ。
一応準備が整うまでは居ても良いとの事なので早々に家を決める必要がある。
「不動産屋に行くか」
不動産屋といってもそれ専門で扱っているのは王都など大きい所にしかなく、この街の規模で言えば『何でも屋』が不動産も扱っている。
なので何でも屋に足を運ぶことにしたが…
「ガキは帰りな!」
残念ながらまともに取り合ってもらえず、家探しは難航していた。
しかしながらシスターお姉ちゃんに大口を叩いた手前ズルズルと孤児院居るのも体裁が悪い。
ならば知り合いの所に転がり込む‥‥うん。無理。知り合いは熱血衛士長さんしかいないが流石に婚約者が居るのに転がり込むのは体裁が悪い。
(仕方ない…どっかの廃墟にでも住み着くか)
それから暫くは廃墟や廃屋に絞って下見を行い、調査の結果北の一画に住めそうな家が放棄されていたので住み着く事にした。
「じゃぁ北の方に住むのね?」
「ええ、家を借りられる様になるまでは冒険者にでもなって生活しますよ」
「判った…辛くなったら帰ってきてね?」
お別れは少しだけしんみりしてしまったが、まぁこの街に居るのでいつでも会えるだろうし悲しむこともない。
とは言えシスターお姉ちゃんが少し悲しそうだったので、最後くらい弟らしく甘えてみたら翌日には持ち直した様で、笑顔でお別れ出来た。
★★★★★★★★
拠点での生活が落ち着いたので一度『ロリババア』の情報を集める事にした。
北の盗賊のアジトから強奪した戦利品の確認をしていた時に数冊の本が有ったのでパラパラと捲って見たところ、読めない文字で書かれていたので『もしかしたら俺の求める『ロリババア』の頂点。齢ウン百年の少女体形魔女の伝説かもしれない!』と思い解読を始めた。
街の本売りのお店を回ったり、学の有りそうな人に聞いたりして行く中で偶然この地を訪れていた遥か西にある多民族国家から来た商人からこの本に使われてい文字は『古代文字』であり、今は廃れていると教えて貰えた。
使われている文字は判ったので次は古代文字を現在使われている文字に翻訳するだけだ。
「光明が見えたぜぇ!」
その日から頑張った。寝ないで頑張った時もあったしストレス発散に街に現れたネズミを駆除したりと努力した‥‥したが‥‥
「無理だ‥‥」
翻訳の前に本に書いて有る文字が理解出来ない。
一文字で一つの意味があるのか複数の文字を合わせて一つの意味になるのかそれすら理解出来ないので解読が非常に難しい。
「流石に情報が足りなさすぎる‥‥」
なので新しい情報を求めてこの街を出る事を考えたが、熱血衛士長さんの結婚式に出る約束もしちゃったのでせめてそれまではこの街にいないといけない。
「くそー!ここで中断するのは負けた気がするが手詰まりなのも事実か‥‥ならそろそろ本業の方に力を入れるか」
最近、自分でも忘れてがちだが本業は魔道具師で金稼ぎ一環で盗賊スレイヤーをしているだけだ。
一応孤児院のシスターさんには冒険者で細々とやってるとは言っているが、疑われると痛く無い腹まで探られそうなので、此処らで魔道具師として生計を立ててます!と言う実績を作るつもりだ。
なので本の解読は一旦保留にして魔道具作りをする事にしたのだが…
「問題は何を作るかだ」
魔道具と言えば一般的に高価な品として知られている。
原因は主に二つ。まず一つ目に作り手が非常に少ない。
形を整えるだけなら比較的簡単で多くの人が出来るがそこに魔法の効果を付与したりするのが難しくて出来る人が少ない。
さらに物に魔法を付与出来る程の人なら超エリート職の宮廷魔導師になれるのでワザワザ自分で道を切り拓く魔道具師を選ばない。
次の原因は素材の価格だ。
良い魔道具程馬鹿みたいに高い素材がふんだんに使われているから価格が高い。
以上の理由から余程画期的な魔道具でも無ければ売れないのが実情だ。
「ドライヤーとかの便利グッズを魔道具化すれば失敗は無いと思うがまずは市場調査かな、流石に二番煎じは避けたいからね」
よし!頑張ろうと気合いを入れて街に繰り出した。
「調査の基本は足!と言う事で何処から聞き込みするかな〜」
「オーキス様!」
街を歩いていると凄い美人に声を掛けられた。
緩くウェーブの掛かった金髪がふわふわと揺れ、天使の様な愛らしい顔に、バランスの取れたプロポーションにひと目を引く大きな胸を持った美女だ。
「お久しぶりです!」
「(ん~見た事が有る様な無い様な‥‥着ている服からしても結構良い所のご令嬢って感じだし、俺の名前を知っているって事は知り合いのハズなんだが‥‥とりあえず話しを合わせよう)ええ、ご無沙汰しております」
「先日は主人が大変お世話になったそうで、是非お礼に伺いたかったのです!」
「(主人!?え?人妻なの!?…まだ10代やん!若っか!)お礼などトンデモナイ」
「それに主人が衛士長に昇格出来たのもオーキス様のお陰と聞いております」
「(あーーーーー!!!思い出したぁぁ!!!!この人アレだ、熱血衛士長さんの婚約者様!確か実家がローズ商会のお嬢さんだったハズ!)いえいえ!行き倒れて素性も怪しい私に快く力を貸して下さったお礼ですよローズ様」
「それでも一度しっかりとしたお礼をと思いまして。あと私の事はどうか『マーガレット』とお呼び下さい」
「承知しましたマーガレット様」
「それでお礼の件ですが、何かお困りの事はございませんか?」
(ん~困ってる事と言えば何の魔道具を作ろうかって事だが…まぁ商会の娘さんだし、市場には詳しそうだからダメ元で聞くだけ聞いてみるか)
「でしたら一つお願いが有りまして、私は魔道具師なのですが何を作るかが思い浮かばず。
そこでどんな魔道具なら生活の役に立つか調査したいのですが…生憎と人手が…」
「承知しましたオーキス様、その調査は是非私にお任せ下さい!どんな品ならば喜ばれるか調査致しますね!」
「ありがとうございますマーガレット様」
なんか思った以上に熱の入った返事だが‥‥熱血衛士長さんの嫁さんだから嫁さんも熱血系かな?
そんな事を思いつつちょっとした世間話を交え調査が終わったら使いを出すとの事で話しは纏まり、次回は衛士長さんと3人で食事をとる約束をしこの日は別れた。
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