第3話 突飛な発言

当初直ぐに解決すると思われた貯蔵庫問題は、俺たちの予想に反して難航していた。

というのも貯蔵庫に問題があるのは間違いないらしいが、原因がわからない。業者が貯蔵魔具を全て新しいものにしても、なぜか魔力が貯蔵庫に溜まらないのだ。

謎の現象に社員と業者が頭を抱えること数時間。

今、俺の隣にいるサヤは鬼のような形相で、ダンジョン入り口付近に近づいて来た魔物を倒していた。



「あと2時間…」


今時珍しいアナログの腕時計を確認する度、怒りが倍増している様子のサヤ。

彼女はいつも定時きっかりに帰るので残業の可能性を危惧しているのだろうか?だとしたら気の毒だが今日ばかりは残業確定だろう…

心の中で彼女を慰める言葉を考えていると、新しい魔具が試せて嬉々としているレンが俺たちの元へ近づきながら明朗な声を上げた。

彼は基本的に良い人なのだが考え方がサヤと相反しているので、二人の相性は良くない。特にサヤの機嫌が悪い時は…。



「やっぱり最新の魔具は火力が別格ですね!これならソロでボスを討伐することも出来そうな威力ですよ!」


ダンジョンに入って直ぐにボス戦なら可能だろう。

しかし、攻撃系の魔具は基本的に魔力消費が高い。レンが持っている魔具は普通よりも火力が高い分、魔力消費量も半端ないはずで、ソロで臨めばボス戦にいく前の戦いで魔具が魔力切れを起こす。

またサヤが怒り出しそうな発言に恐る恐る視線を隣に向けると、彼女はハッとした顔を浮かべていた。



「そうか…ボスさえ倒せば…定時に帰れる」


注意していないと聞き取れない声でそう呟いたサヤ。無謀なセリフに声をかけようとした時、申し訳なさそうな顔をした社長が現れる。

すると彼女はちょうど良いと言わんばかりの笑顔を向けて社長に近づいた。



「皆、すまないがまだ解決し…」

「社長!ちょっと私、ここのボスを倒して来ます」


ちょっとトイレに行って来ます。というようなテンションですごいセリフを言ったサヤにそこに居た社内全員の視線が集まった。

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