第7話 ド外道リスト






 考えてみれば、ヒューイット様が呼ばれるお茶会に私も必ず呼ばれているとは限らないのよね。

 グレイ侯爵家は派閥の上ではベッドリー公爵家の縁戚だ。ベッドリー公爵家と我がグリーンヒル家の関係は悪くなかったし、私がヒューイット様の下僕になっても我が家と敵対することにはならないだろう。


 ヒューイット様が呼ばれそうなお茶会というと、やはりベッドリー公爵家の派閥のものになるのかしら?

 社交に力を入れている家なら、派閥外の家でも招くことは珍しくない。特に、上位の貴族にどれだけ参加してもらえるかはステータスになり得る。

 私は公爵令嬢なので、そういう意味では人気はあるはずだ。実際、前回もお茶会の招待状はたくさん来ていたはず。


 ベッドリー公爵家の派閥で、社交に力を入れていて、私を招いてくれそうな家は……


 うわ。

 一つ思い浮かんでしまった。ホルムズ侯爵家。

 嫌だなあって思ってしまうのは、ホルムズ侯爵家の嫡男バーナードが私に冤罪を着せた殿下の側近の一人だからだ。今回は絶対に近づきたくない。

 でも、バーナードの姉のアリシアが社交好きで、よくお茶会を開いていたのよね。


「うーん……」


 私は頭を悩ませた。


 正直、前回のトラウマでヒューイット様以外の人にはあまり近寄りたくないのよね。裏切られるの嫌だし。


 でも、あのド外道どもに対抗するには、人脈を作っておく必要があるかもしれない。


 私はノートにド外道リストを書き込んでみた。



 ジュリアス殿下 第一王子殿下。絶対に許さない。


 ルナマリア・ムーン 元平民の男爵令嬢。四年生の年に編入してきた。殿下他を籠絡する。死んでも許さない。


 バーナード・ホルムズ 侯爵家嫡男。社交的な姉アリシアと違って陰険。確実に許さない。


 アダム・モーガン 伯爵家嫡男。モーガン伯爵は騎士団長。なにがあろうと許さない。


 コリン・ブライム 伯爵家三男。私の母方の従兄弟。前回は公爵家を継がせるために養子にした。微塵も余すところなく許さない。


 カナリア・ザフィリ 侯爵令嬢。私の取り巻きだったけれどルナマリアの味方をして嘘の証言をした。なにからなにまで許さない。


 マーゴット・シャイデン 伯爵令嬢。上に同じ。なにがなんでも許さない。



 ふう。

 やけに怨念のこもったページになってしまった。まあいいわ。

 新しいページに移って、新たな人の名前を書き込む。



 フアナ・ワトソニア 伯爵令嬢。バーナードの婚約者。


 イベリス・レモニー 子爵令嬢。アダムの婚約者。


 エリーナ・コーレア 伯爵令嬢。コリンの婚約者。私の父方の親戚。おとなしい性格。



 エリーナ以外とは話したことがないけれど、三人とも、婚約者がルナマリアに夢中になってしまって困っていたはずだ。

 彼女たちとは仲良くなっておいた方がいいかもしれない。

 もしかしたら前回で、私が死んだ後に彼女達も殿下達になにかされたのかしら。

 殿下とルナマリアならやりそう。彼女達に魔の手が及ぶ前に陛下が殿下達を捕まえてくれていればいいけど。


 よし。自分の身を守るため、そしてなにより、ヒューイット様を幸せにするために、頑張って人脈を広めよう。



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