二人の勇者と一人の戦争

あさのたけし

本編

何があっても朝は来る。朝というのは夜より残酷なのかもしれない。夜には見えなかった戦死した遺体も朝になれば、くっきりとみえる。僕には戦争で生き残る事は苦痛でしかなかった。僕はただ、死んだ人の胸で泣くことしか許されていない。だって、僕らが奪った命なのだから。罪には罰が与えられる。ただこの世界では戦争は当たり前で合理的なことだと教わってきた。それが違うと気づけたのは、相手国のノワールアロマという女性のおかげだ。「戦争は戦争を引き寄せる。戦争は平和を突き放す」。この言葉は死ぬ寸前に放った言葉でその時自分はようやく、自分のやってきた愚かさを自覚した。戦争は良くない。良くないからこそ、止めゆるものだ。何人たりとも邪魔はさせない。それから僕は大勢の兵士を説得し抗議することとなった。「あなたのやってることは間違っています」と言うと、銃を自らの口に入れ、じゃあ何が正しい。何をもって正義と言えると、王様は自害した。我が国の王は独占的で国民を駒のように使い、人の死を重んじない最悪の王であったが確かなリーダーシップがあり、そんな冷徹な王だからこそ勝ち抜いてきたが、また自分は、命を奪ってしまった。守ることさえ出来なかった。こうして我が国は混乱の渦へと叩き込まされ、再び戦争の火花が散った。


最後の王の言葉の意味も知らずに。

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