第8話 狐少女の福音

 洞穴、夢の中は暗い場所だった。


 同じようにジメジメして、彫り抜いた岩の道、その先にあの場所がある。


 ただ、夢の中の道ではない。

 流れた時の流れを感じさせる。 


 レンガで固められた、さらに非常用の電源から明かりがトウトウと輝いている。


 そばに看板があった。


 観光地として、歴史のアピールしようとしていたのだろうか。


「防空壕?」


戦時中に防空壕に使われていた……そして、元は氷室だったと、書かれていた。


わたしの夢で見たのは氷室として使われた頃なのだろうか。


 氷室は外界と洞穴の気温差で氷室は雪、天然の氷を保管する施設のことだ。

 塩害が強い地域だからこそ、天然の冷蔵庫として利用されていたとある。


 こんな所にあるなんて、始めて知った。

 ほとんど知られていないから、わたしを閉じ込めていたのだらうか。

 

「ここ?」


 わたしは狐にたずねる。

 狐はうなずいた。


 ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!


 その音が響く、つけられていた。


 どうして、この狐がわたしをおびき出したの?

 わたしを殺そうとしているの?

 狐は強く、来た方向を見つめ続けていた。


 空気がふるえる、暗い暗いなにか……


 現れたのは艶艶しい頭蓋骨の男。


 覚悟していると怖くない。そう、ここで終わらせるつもりなんだ。

 この狐は、そして、わたしの家の因縁を解決しようとしているにがいない。


 守ってくれていた狐なのだから…


 強く狐を信頼しようと努めた。

 もう、ここまで来たら、信じるしかない。


 わたしをみて、骸骨がいびつに笑う。

 そして、駆けた!


 きっと。狐様がまもって……??!


「えっ!」


 狐は何もしない、そのまま、骸骨がわたしのもとに駆けた。


 ガシャガシャガシャ、ガッツ!


 骸骨の手がわたしの肩をつかみ、そのまま押し倒す!!


「きゃあー!」


 叩きつけられた、痛い!

 目の前に麗しく艶びかりする骸骨が馬乗りになっていた。


「た、たすけて、お願い! どうして、あなたはわたし達を守ってくれているって、なんでなの!?」


 狐はただ、悲しそうにわたしと骸骨を見ているだけ。

 

 細く白い指はわたしの首を締める。

 

 華奢な骨なのに、引き剥がすことができない……


 どうして………


 息が……死ぬ、死ぬ……


「………た……ひゅ」


 息ができない。


 そっか、そこまで、狐も骸骨もわたし達を恨んで、末代まで……


 ここで死ぬんだ。


 覚悟を決めた時………指がゆるむ。


「ゲホッ、ゲホッ!!」


 咳込み続け、やっと気づいた。


 骸骨は戸惑うようにわたしを見下ろしている。


 なに? どうして、そんな悲しそうなの?


『ま、ま……て……満天……』


 まて……何を…でも、心に響く。


 違う満天、名前だ。


 狐が骸骨に近づき、やがて、狐は少女の姿へと変わっていく。


『み……の……実……』


 少女を見て、なにかに気づいたように骸骨がつぶやく……どうして、骸骨がわたしの名前を愛しそうに呼びかけるの。


 そして、骸骨に肩に手をあてる。


『そうよ……』


 なにかを悟ったように骸骨の指が止まり、そのまま……骸骨は砂のように崩れていく。


 そして、少女は寂しそうにわたしを見ている。


 思い出した……夢の中の少女……わたしをここに閉じ込めた


「……お…お姉ちゃん」

 

 あの火の地獄から、救いわたし……違う……わたし達のご先祖様を助けてくれたんだ。


 あの時の姉が……そして……彼女も殺され小さな骨の一つになった。


 結局、狐も骸骨も……本当は?


 やがて、わたしは意識を失った………

 

 

 

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