第7話 狐の行き先

「あぁぁぁぁーーーー!!!!!!」


 なに、あれ、なに?


 きれいにさっぱり、炎は消え病室に戻っていた。 

 骸骨の群れがいない。

 あの地獄の光景は消えていた。


 いまは平穏に虫の音が聞こえる平和な光景が広がっていた。


 夢、あの夢は何?


 ポプ。


 なにか、頭に乗っかった 柔らかくてぬくもり感じる。


 チラリと視線を動かすと狐がいた。

 わたしの頭の上にのっているのは狐の前足だ。


 あぁ、気持ちいい肉球〜

 かわいい癒やし。


 違う……


「き、狐!」


 狐は私のそばにおりこうに座っていた。

 その目は愛おしいものを見守るようにわたしを見おろしている。


 意味深なその瞳で視線を反らない、

 なに、どうして、わたしを見てるの?

 その愛情はなに?


 やがて、狐はベッドから飛び降り、クイッとドアの方に向く。

 そして、前足で指を指す。

 デフォルメされたような仕草に笑ってしまうが、ついてこいと言うことなのだろう。


 簡単に扉が開いていく。


 その光景を見守りながら、わたしは息を飲む。

 

 「それはどこに?」


 狐はわたしを真摯に見つめる。

 なにかをうったえるように。


 伝説だと狐はわたし達を守ってくれているはず。


 覚悟を決めて、わたしは扉の先へ歩きはじめた。 


ーーーー


「まってよ!」


 わたしは狐の後を追う。

 春の季節とはいえ、パジャマにカーディガンを羽織るだけでは寒い。


 先へ、先へとわたしは向かう。 

 どこかに誘うように、どこに行くのだろうか。


 コンクリートの歩道から、草藪の道へ。


「ハァハァ、どこに行くのよ〜」


 スニーカーで歩くにはキツイ道に出た。

 すでに泥だらけに汚れてしまうスニーカーとパジャマ。


 歩くたびにぬるりとすべる道、泥がまとわりつき、どこに向かうの。

 

 ふと、同じ感覚を夢で見たような気がした。


「そこなの?」


 この先にあの場所がある。

 それは、夢に見た洞穴。

 

 夢と違うのは剥げたペンキ、錆びた鉄格子で閉ざされた夢の時よりも現代的な物に変わっていた。


 看板には立入禁止と書かれている。 

 

 この現代的なその場所はより、リアルな禁忌の場所に変わっていた事が実感できた。


 暗い地獄のゾクリと震えた。


 冷や汗が落ちる……


 わたしを閉じ込めた場所。

 

「その、わたしって誰?」 


 戸惑っているわたしに 狐は前足で洞穴の先を示した。


 そこに狐は入っていく、どうして、そんな所に降りていくの。


 立ちすくむわたしに狐が足元にすりよっていた。

 優しく、見守るように……そして、誘うように洞窟へと向かう。


 すべての事が過去あった出来事なら……どんな意味があるのだろう。


 ここで終わるに違いない。数多くの因縁が。

 狐とともに冥界へとくだる。

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