幕間 三条と稲荷

 

 あの塚に祀られたのは荼枳尼天。 

 謎がとけていく……


 なぜ、三条、三辻が稲荷だったのか、チグハグだった。


 このちぐはぐさが俺が地方学者の道に進ませた……


 気になっていた。


 三条の先祖、藤原氏の氏神は春日大社だ。

 とくに三辻に流されてからも、公家藤原の末裔を誇り、この地を支配した三条が稲荷なのか。


 それなのに関係のない稲荷神社の神紋、火炎宝珠紋にしている。

 

 地域的に三辻は塩害がヒドく田はできない。商売をしていた形跡もない、漁業と、かろうじて三条の名声で成り立っていた。


 稲荷の神徳に漁業はない。


 なぜ、稲荷神社なのか……稲荷を氏神とし日本に持ち込んだのは秦氏。

 彼らは始皇帝の末裔を名乗り、飛鳥時代に日本に流れついた、外来の氏族だった。


 始皇帝というが何者だったかわからない。


 藤原と秦の関係はない、むしろ、秦を配下にしていたのは蘇我氏 蘇我を滅ぼしたのは中臣だった藤原だ。


 逆縁だ。

 

「塚は荼枳尼天だった……荼枳尼天を祭った集団があったはず、そして……」


 歴史の中に消えた集団がいた、その祭祀力で猛威をふるった集団。

 

 現存資料にはない……ピースがある。


 錆びた鉄の棒、これは刀だった物。

 刀には藤原家の上がり藤の家紋が刻まれていた。


 もしかしたら、三条家の本当の家紋は上り藤だったのかもしれない……そして、いつの間にか火炎宝珠紋に変わった。


 そこで電話が鳴りひびく。

 頼んでいたものが、調べがついたのだろう。

 仕事が早い。


「もしもし……三条だ……ああ………やはり……つながったか?」

 

 一つの可能性がつながる。


「もう、一つはどうだ……そちらは繋がらなかったのか……そうか……意味することは一つ……」


 電話を閉じる。

 つながりを整理すると視えることがでてくる。


「思ったより根が深い」


 俺は、マグカップを手にとる。


 落ちつけ……落ちつけ…落ちつけ…


 ふと、冷や汗が流れる。

 

 とたんにさっきの熱が下がっていく……

 

 ガシャ…ガシャ…ガシャ…ガシャ…ガシャ…ガシャ…ガシャ…


 な、何が来た!


 この足音は何だ……まるで、肉がないような無機質な足音……


「と、解かれていたのか…あるわけ…ない」


 かつて、流行った荼枳尼天の呪法は封印、恨みつらみを持つ人間の魂が悪さをしないように閉じ込め続けるための物だった。


 地方の稲荷は罪人を封印した社もある。


 未だに恨みが続いていたのか……末代まで、滅ぼすため……に……ウソだろ。


 目の前に漆塗りの骸がたっていた……

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る