第4話 昔話の………


 目が覚めるとそこに狐がいた……


「きゃあ~!」


 私の悲鳴を聞きつけ、入ってきたのは宗美兄さんだ。


「どうした!」


「そこに狐が! 狐が!」


 わたしが指を指す方に宗美兄さんが向くと、そこに狐は座っている。

 ここは五階なのに狐がいるの!

 もふもふの白い毛色の狐。しかし、その狐は血のような赤い目。

 

「狐? 何もないぞ」


 うそ、見えていない、そのことを理解した瞬間、狐はわらった。


「な、なんなの、なんなの」


 頭をかきむしる。本当にわけが分からない。塚のあの骨、狐、わからない?! なんなの?


 ……あれはなに?


「稲荷神社」


 そう、あの塚に鎮座する稲荷神社。

 兄は地域の学者だ、何かを知っているにちがいない。


「宗美兄さん。あの塚は何?」


 わたしがたずねると宗美兄さんは頭をかいて、三条家の発祥を口にする。


 それは先祖の開祖譚……栄光の始まり……


 ーーーーーー 


 昔、この村に化け物がいた。


 その化け物は生贄を求め、年頃の娘を捧げ、村は存命していた。


 村の名前は三叉路の村 三辻村の怪異譚。


 そんな村にある公家が流された。


 武勇に名高かく、藤原末裔という高貴な三条高正といった。


 しかし、その化け物は力強くて三条高正の力をもっても打倒されない。


 高正は社に願う、この村の平和と安寧を。

 

 彼は荒れた世の苦しみを知っていた。


 一心に祈り、やがて、刀をくわえた美しい白い狐が現れた。


 刀を高正にかしあたえた。


 その神刀をもち、狐を従え化け物と死闘を繰りひろげた。


 やがて、化け物は死にとらえられていた美しい娘を助けだした。


 娘と高正は結ばれ、この村を治めることとなった。


 けど、化け物の怨霊はこの村を苦しめ、長い飢饉が村を襲う。


 それは化け物と 48人の仲間たちの怨霊のせいだという。


 このために狐は化け物を封じ込こめ、自らを神体として社を築かせた。

 

 それが、稲荷神社。


 三条高正は村を治め、富をもつにいたる。


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