お姫様は焦らし上手

梅里遊櫃

第1話 俺はキャンプがしたい


「お前は山で焼肉をしたことはあるか、川で魚を食べたことがあるか」

 俺はこいつら全員に問いたい。

 前時代的な雰囲気のくせに山が川が大事だ?

 落ち着いてくれキャンパーは環境にやさしい。なんならキャンプが流行ってたんだ。一人の時間や家族の時間を独自で作れるスパイスだ。

 なんでその文化がないんだよ。前時代的なのに。どう考えても1400年代ぽいのに。

 

 山河竜巳は考えていた。野営はできて、キャンプができないこの実態に。

「なんでキャンプさせてくれないんだ……」

 ぼやいていた。

 一人で満点の星空の下で飢えていた。

 キャンプに。

 キャンプに飢えていた。


 野営はこれから討伐する蛮族地域のためだ。

 そうここは地球に似たメーネ大陸のオーゾーク王国の管轄の地域。

 貴族たち、戦士たちの見た目は1400年代・15世紀の見た目だ。

 15世紀はどんなだったかご存知だろうか。

 山河はぼんやりと考えた。


「また、騎士様は悩み事で?」

「またか……キャンプはいつできそうで?」

「今してるじゃないですか?」

「王女様、これは遠征であってキャンプとは呼べないよ」


 そう、王女様。この中世から引っ張り出してきた見た目の王女様は遠征までついてくる始末のお転婆で馬鹿な戦争マニアだ。

 シェラス=オーゾーク。

「戦争が大好きなら、外に行かないのか」

「戦争好きなんて失礼な。私は戦争じゃなく、富国強兵が好きなのよ。

 あなた知らないの。

 他人の国の前に自分の国よ。前国王がやり残したことをするのが私たちの仕事よ」


 --知らないよ。

 竜巳は来た王女様を目線から外し、少しでもキャンプを味わいたいと草むらに鎧を外して楽な体を横にする。

 現代なら、そう思う。カーボンでもなんでも使ってもっと頑丈にするだろうに。

 体につけられた鎧に苦しみを感じていたつい1年前に思いを耽るのであった。

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