ユキナの決意

 露天風呂はなんと貸し切り状態になっていた。


 出入口にあった張り紙を見ると、そこにはなんと「エスリオ様ご一行 貸し切り」と記載されており――。


 やっぱりこれは、あの婆さんの入れ知恵だと思った。


 気配を探ってみるも、中には店員と思わしき気配が数人感じられるだけ。つまりあの婆さんは、俺とユキナを二人きりにするために、大金叩いてここを貸し切ったのだ。


 お節介もいいところである。


 ……つーか、孫のレナは「あまり金がない」的なことを前に言ってた気がするけどな。いったいなにがどうなってるんだか。


 とはいえまあ、温泉自体はすごく気持ちよさそうだった。

 だから俺も、覚悟を決めてユキナとの混浴を決心したのだが――。


「あ、ロアルドさん! こっちですこっち‼」


 女用の脱衣所から出てきたユキナが、朗らかな笑顔とともに片手を振ってきた。


 やたら無邪気に俺との混浴を楽しみにしてるようだが、なにしろ巨乳がやばい……!

  彼女の身体が揺れるたびにぷるんぷるん揺れるもんだから、どうしても視線がそっちに向けられてしまう。


 ――ああ、駄目だなこりゃ。

 とっくに枯れてると思ってたんだが、やっぱり俺も男だった。


 しかも、それだけじゃない。


「おい、くっつくな‼」


「いいじゃないですか。親友って言ったでしょう私たち」


「お、おまえ…………!」


 あのとき親友って言ったのをいいことに、ほんとにグイグイくるようになったよな。


 ほんと大人しそうな顔をして、妙に積極的なところがあるというか。

 ……まあ、そうじゃなきゃ積極的にSランク冒険者になろうとしないか。


 そんな思考を繰り広げつつ、俺たちはひとまず身体を洗うことにした。


「ロアルドさん、私の胸洗いたくないですか?」

「…………」

「ロアルドさん、聞こえてます?」

「……いや、悪い悪い。聞き違いかと思っただけだ」

「そんなことないですよ♪ 親友ですよね、私たち!」

「…………」


 ああ、あの親友発言は間違いだったか。

 もとから妙にグイグイくる一面があったが、それがさらに加速してしまっている気がする。


 ――だが俺だって、いい歳こいたおっさんだ。

 こんな若い娘にいちいち振り回されたんじゃ、元勇者の名が泣くってものである。


「あ……!」


 むにゅ、と。

 もう、破れかぶれで彼女の巨乳を洗ってみることにした。


「うお…………」


 やばい。

 これはめちゃめちゃ柔らかい。

 勇者だった時も含めて女性経験が全然ない俺にとっては、なかなかに理性が飛びそうになる柔らかさだった。


「わかったかユキナ。あんまりおっさんをからかうなよ」


「もっと……洗ってほしいです」


「ばか。あんまり調子にのるな」


 なにやら頬を赤らめだした彼女の額を、俺はこつんと優しく小突く。


「そういうのはな、惚れた男と一緒にやるんだよ。俺みたいなおっさんとやるもんじゃねえ」


「だってロアルドさんが、私たちを親友って言うから……」


「またそれか。俺は別にそういう意味で言ったんじゃなくて……」


「わ、私だってそうです‼」

 俺の言葉を、ユキナがそう遮った。

「ロアルドさんと仲良くなれるのは嬉しいですけど……親友っていうのは、あくまで友達じゃないですか。それはつまり、私たちは友達の関係・・・・・で止まっちゃうってことですか?」


「は…………?」


 目をぱちくりさせる俺に対して、ユキナははっとしたように頭を下げた。


「ご、ごめんなさい。失礼ですよね。ロアルドさんは大魔神を倒した英雄なのに……私がこんなことを考えること自体、おこがましかったです」


「…………」


 おいおいおい。

 嘘だろこいつ。

 こんなこと言い出すって、こいつマジで……。


「――だったら私、親友のままでも、身体の関係だけがあっても大丈夫です。ロアルドさんと一緒なら、それだけでいいですから……」

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