称賛されまくるおっさん冒険者



 その後、俺たちは孤島から脱出し、ルーマス村に戻ることとなった。


 もちろん、あの《魔神再誕教団》を放置しておくわけにはいかないからな。

 ルーマス村に戻り次第すぐ、冒険者たちに構成員たちを確保してもらった。


 しかも驚いたのが、エスリオがめちゃめちゃ強い冒険者だったということ。

 なんと「当代最強の実力者」と言わしめるほどの戦士だったそうで、冒険者たちがみな恐縮していたのだ。


 拘束されていたAランク冒険者――ミユルに至っては、エスリオをお師匠様と慕っている始末。


 元勇者のおっさんに、神の力を持つヒーラーに、当代最強の冒険者(ババア)……。

 我ながら濃すぎるパーティーになったもんだ。


 しかもこれは後から知ったんだが、ムラマサの屋敷には大勢の人質がいたらしい。


 ギルドでもこの誘拐事件について突き止めようとしていたが、ついぞ決着には至らず――。

 それを俺たちが解決に導いたってことで、めちゃめちゃ感謝された。


 なにしろ《魔神再誕教団》の構成員はいつもコソコソ動きまわっていたようだし、個々の戦闘力も馬鹿にならないからな。

 Aランク冒険者のミユルでさえ苦戦していたということだから、一筋縄ではいかない事件だっただろう。


「ありがとうございます、ありがとうございます……!」

「ロアルドさんは命の恩人です……!」


 だから人質を解放した俺は――なぜかみんな若い女性ばかりだったが――しきりに俺に感謝を捧げていた。


 しかもみんな、「あとでお礼をしたい」「せめて連絡先だけでも」と言ってくる始末。


 心揺らぐ部分があったのも事実だが、それは丁重にお断りしておいた。

 色欲にまみれても良いことはないことくらい、弁えているつもりだからな。


 たしかに人質を解放したのは俺たちだが、ムラマサの屋敷に訪れた理由は、あくまでザバルの手紙にそう書いてあったからでしかない。

 言ってしまえば、俺たちは偶然助けることになっただけで――それで感謝されることが、どこかむず痒かった。


 ひとつ気になるのが、

「ここでサポートするのがお節介ババアの役割じゃ!」

 と言って、エスリオが女性たちと何やらヒソヒソ話し合っていたこと。


 ロアルド殿は遠慮しているだけとか、ワシがうまいことデートの機会を設けるとか……。

 いらんことを話していたので無視しておいた。


 というわけで。

 事件を解決した俺たちは、数日間ルーマス村にてのんびり過ごした後――。

 かねてより約束していた、ギルドマスターとの対談を果たすことになった。


★  ★  ★


「は⁉ “隠れSランク”への昇格⁉」


 そして。

 俺とユキナに告げられた言葉は、到底思いも寄らない言葉だった。

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