偉人からおっさんへの手紙
「ほう……?」
早くも部屋に戻ってきたユキナに、俺は驚きを隠せなかった。
なにせ装備を作りに行ってから、まだ二時間くらいしか経っていないからな。
そんな短期間で武器防具を完成させられるとは……伊達に
「そしてロアルドさんには……こちらを」
同じく部屋に戻ってきたレナが、黒光りする剣を俺に差し出してきた。
……聞かずともわかる。
この圧倒的なる強者感。あまりにも禍々しい存在感。
これこそが、二千年前、この世界を丸ごと支配下に置こうとした大魔神エクズトリアの剣――。
そんな予感を抱くに充分すぎるほどの風格が、すでにその剣から放たれていた。
「それから、ロアルドさん。この剣をあなたに渡す時、一緒に先代からの手紙を渡すようにとも言われています。どうかそれもお受け取りください」
「手紙だと……?」
あのザバルが俺に伝えたかった言葉か。
剣ももちろんだが、そっちのほうも気になるな。
俺は先に封筒のほうを受け取り、中に入っていた手紙を開封する。
――――――――
バ――――カ。
大魔神なんかと一緒にくたばっちまいやがって。
おまえが命を賭けて守ろうとしたこの世界は、おかげさんで平和にやれてるよ。
俺はそんなことよりも、またおまえとうまい酒を飲み交わしたかったんだがな。
本当に馬鹿な奴だよ、おまえは。
……まあそんなことより、今はなんで俺が未来を見通せているのか気になってると思う。
あとはたぶん、一緒にいるヒーラーのこととかな。
だが俺は頭が悪い。うまく説明できねえ。
童貞ムラマサの住んでたとこ、覚えてるだろ?
そこに足を運んでみろ。
あいつは魔法だけは一人前で、おまえがここにくることを見越していたのもムラマサだ。
そこまで足を運ぶのが難儀だったら、古代龍が住んでた森にでも足を運んどけ。
龍は俺たち人間と違って長生きだからな。たとえ二千年後の未来だとしても、古代龍が快くおまえを背に乗せて目的地まで運んでくれるだろう。
(わかってるとは思うが、あんまりいじめすぎるなよ?)
そんで……最後になったが、あんたが受け取った剣の名は《魔神剣エクズトリア》。
おまえさんが大魔神と相打ちした、その戦場から採取した素材が素になっている。
秘伝の製造方法もしっかり伝授しておいたから、俺の末裔ならうまいこと作ってくれるだろう。
…………本当はおまえが生きているうちに、俺が渡したかった剣だけどな。
だがもう、おまえはこの時代に生きてはいねえ。
本当にやってらんねえ話だよ。
ちょいと危険だが、その剣は大魔神の力をそっくりそのまま扱うことができる。
一帯を闇で飲み込むやべえ魔法とか、斬りつけたと同時に雷に打たれるやべえ技とか……そっちはおまえのほうが詳しいはずだ。
今は目覚めたばかりでブランクもあるだろうが、ちょっとずつ前の勘を取り戻していけや。
じゃあな。未来でも元気でやれよ。
世界一の名匠 ザバル・ディスティーナ
――――――――
「はは……。自分で世界一の名匠とか言ってんじゃねえよ……」
ぽつりと呟いたその声は、俺自身も驚くほどに震えていた。
ザバルはなかなかに個性的な奴だったが、こいつとは仲が良かった。夜通し酒を飲みかわし、世界のあるべき姿について議論をぶつけ合ったこともある。
そんなザバルにしてみれば……たしかに俺は命と引き換えに世界を守った大馬鹿野郎だな。
俺もまだ、あいつとは話し足りないことがまだまだあった。
「…………」
レナから手渡された《魔神剣エクズトリア》は妙に手に馴染んでいた。
大魔神にはかなりの苦戦を強いられたが、二千年の時を経て、こうして大魔神を素材にした武器を手にいられたわけか。
……やっぱりクソ強いな、この剣。
はっきり言って、今まで使っていた剣とは次元が違う。
剣士としての格が一段階も二段階も引き上げられたような――そんな感覚さえ込み上げてきた。
「じゃじゃーん! 見てください、私もほら!」
そう言ったのは、謎のヒーラー能力を持つ相棒――ユキナ。
堅牢そうな漆黒の防具を身にまとっており、少なくとも見た目だけならEランク冒険者には思われない。Sランクモンスターのドラゴンゲーテが素材になっているわけだし、ちょっとやそっとの攻撃なら簡単に耐えられるだろう。
「はは……。よく似合ってるじゃねえか。よかったな」
「いえいえ、これも全部ロアルドさんのおかげですよ♪ 本当にありがとうございます!」
そう言って笑顔を浮かべるユキナは……下世話な話、めちゃめちゃ可愛かった。
「んなことはねえよ。おまえのおかげで洞窟から帰れたんだからな」
「で、でも……」
「でもじゃねえ。おまえはもっと自分に自信を持て」
「えへへ……。ありがとうございます」
そんなユキナの謎は、童貞ムラマサ――現代では大賢者ムラマサと呼ばれている――のもとに行けば知ることができるという。
ザバルの遺言だし、なによりユキナのことは俺自身も気になるからな。
ゆっくり準備を整えたら、今度はそちらに行ってみるか。
ルーマス村のギルドマスターは数日は村に戻らないって聞いてたし、少しくらいなら問題ないだろう。
妙に強そうな婆さん――エスリオもついてきてくれるってことだしな。
多少の遠征くらいなら、きっとどうにかなるはずだ。
そんな決意を新たにして、俺はザバルの手紙を大切に懐にしまうのだった。
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