追放のおかげで最強バディができつつある件
さて。
一通りドラゴンゲーテの素材を剥ぎ取った俺は、とりあえずダンジョンの外に出ることにした。
ここはバルフレド洞窟の最深部。
もちろん転移結晶など持ち合わせていないので、無事にここから出られなければ、ドラゴンゲーテを倒した意味がない。合計で三十五階層とそこそこ深いダンジョンなので、むしろ今からが本番と言えた。
「それじゃあ、さっそく脱出するかユキナ」
「は……はい」
「ん? どうした」
なんだか壁際で申し訳なさそうにしている彼女を見て、俺は眉をひそめた。
「だって、私が一緒にいたらロアルドさんのお荷物になるじゃないですか。だからベルフさんもリースさんも、私のことが大嫌いで……」
「…………」
「だから、ロアルドさん一人で行ってください。私も私で、頑張って脱出してみせますから……!」
そうか……なるほどな。
ユキナにとって、さっきの追放劇はかなりのトラウマになっているんだろう。
三人の事情は詳しく把握できていないが、ベルフ、リース、ユキナの三人が幼馴染ということは知っている。
現在はみんな二十歳で、最強パーティーを作り上げようと決意を固めたのが二年前。
ベルフの剣術、リースの魔法、そしてユキナの回復術。
なんともバランスの取れたメンバーで、それこそパーティー結成時はとても仲が良かったらしい。あんなに醜悪な笑みを浮かべていたベルフでさえ、当時は純真な表情で、世界中の人々を助けたいと語っていたという。
だがまあ――富と名声を前にした時、人間は本性を隠し切れなくなるもんだ。
俺も昔は散々なトラブルに巻き込まれてきたし、今更こんなことで驚くことはない。
おおかたベルフもリースも、金と色恋に頭がいっぱいになっているんだろうしな。
だが……ユキナはまだ二十歳だ。
そんないざこざに巻き込まれた経験自体が少ないだろうし、俺だって当時はかなり参っちまったもんだ。今まで信頼していた人間が、こうも変わっちまうのか……ってな。
俺が彼女を導くなんて、そんなおこがましいことは言えないけれど。
無駄に歳食っちまってる分、ユキナにできることは沢山あるはずだ。
「そんな小せえこと気にすんなよユキナ。ほんとはおまえだって、生きて帰りたいんじゃねえのか」
「う…………」
「たしかにおまえは、実力面ではパーティーで浮いていたかもしれない。でもパーティー内で一番頑張っていたのもおまえだった。それはわかっているつもりさ」
「あ……」
ユキナの目が大きく見開かれる。
「だから俺についてこい。俺のほうこそ、さっきの解呪魔法? みたいなのをお願いするかもしれねえし」
「そ、そんな……。いいんですか?」
「当たり前だろ? それともなんだ、おっさんと一緒に組むのは嫌か」
「そんなわけ絶対ありません! あるわけないじゃないですか!」
「お、おう……」
なんだか急に頬をぷーっと膨らませて怒られたので、俺もびっくりしてしまう。
慰めたつもりだったんだが、逆に怒りを買っちまったか?
二千年前も事あるごとに「女の扱いには気をつけろ」「あんまり多くの女を泣かせるな」とかなんとか言われてきたし、女への苦手意識がまだ残っているのかもしれない。というか一生治らない気がする。
「ま、まあ行こうじゃねえかユキナ。おまえの解呪魔法さえありゃ、向かうところ敵なしだ。あとは俺に任せておけ」
「は、はい……!」
そう言って俺の傍にぴたりと張り付き、懸命にちょこちょことついてこようとするユキナだった。
……たまにおっぱいが当たってるのは狙ってるのか天然なのか、それだけはっきりしてほしかった。
★ ★ ★
そして、それから数十分後。
「――なんだ、思ったより早く着いたじゃねえか」
想像よりもだいぶ早めに地上に到着した俺は、いま昇ったばかりの朝陽を浴びて、うーんと身体を伸ばした。
今までずっと薄暗い洞窟の中にいたから、太陽の光がめちゃくちゃ気持ちいい。
本当はあと数時間はダンジョンにこもっていると思っていたんだが――こんなにも早く脱出できたのには、もちろん訳がある。
「ユキナ。おまえの解呪魔法……やっぱり化け物だな」
「え……。そうですか?」
引き続き俺の傍に密着したままのユキナが、可愛らしく小首をかしげる。
「ああ。これでも世界各地をまわって、腕利きの神官やら特効薬やらを頼ってみたんだ。それでも全然効果なかったってのに……おまえの解呪魔法はマジでよく効く」
「ほ、ほんとですか……?」
そこでぱあっと目を輝かせるユキナ。
「ってことは私、ロアルドさんの役に立ててましたか……?」
「ああ、もちろんだ。おまえがいなきゃ、もうちょい苦戦してただろ」
「や、やった……! ありがとうございます!」
そこで天使級の笑顔を浮かべるユキナは、やっぱりめちゃめちゃ可愛かった。
――ベルフとリース。
この二人がいなくなったおかげで、むしろ俺たちは最高のバディを組むことができているんじゃないか。
俺はいま、ひそかにそう思い始めていた。
―――――――――
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