おっさん、真の実力を一瞬だけ解放する

「グォオオオオオオオ‼」


 漆黒龍ドラゴンゲーテが咆哮をあげただけで、周囲の空間が大きく歪む。

 一帯に震動が発生し、天井からはポロポロと岩の欠片が落ちてくる。


 さすがはSランクモンスターというだけあって、かなりの馬鹿力を誇っているようだな。道中で戦ってきたモンスターと比べても、その膂力りょりょくははっきり言って比較にならない。


 ――だが、それでも関係ない。

 俺は決意を新たにすると、変わらず咆哮をあげ続けているドラゴンゲーテと対峙する。


「んー! んー!」


 身体が動かせない割に、ユキナも涙ながらに訴えてきていた。


 ――だめ、行ってはいけない。

 ――私だけを置いて逃げて。


 そう言っているように思えた。


「気にするな。あんな奴らに俺は負けない。絶対にな」


 地面に伏せている彼女の頭に一度だけ手をのせると、俺はふっと笑い、あらためてドラゴンゲーテへ距離を縮めていく。


 ――ロアルド・サーベント。四十五歳。


 それが今の俺だ・・・・


 だが正確なところを言うと、俺はもっと古くから生きてきた。


 本来は二千年くらい前に生まれた、元勇者だ。


 最後に戦った大魔神はクソ強くて、世界最強と言われた俺でもめちゃめちゃ苦戦した。国どころか大陸さえも破壊しうる戦いを経て、俺はようやく大魔神から勝利を収めた。


 だがあいつ大魔神もなかなかに執念深い奴でな。


 俺に殺される直前、俺に呪いをかけていきやがった。


 その呪いというのが、約二千年もの間、俺を眠りにつかせるというもの。しかも寝ている間は別次元に俺の肉体を封印させるっていうから、誰かに叩き起こされることもない。


 その眠りから覚めたのが、つい一年くらい前。


 とりあえずこの時代にも冒険者ギルドがあるっぽかったので、そこで冒険者登録を果たした。昔の名前そのままの《ロアルド・サーベント》と名乗ってしまった時は「しまった」と思ったが、受付は特に気にするふうでもなく受け入れてくれた。


 その時に偶然出会ったのが、ベルフ、リース、ユキナの冒険者パーティーだ。


 当時はまだみんな最底辺のEランク冒険者だった。


 だから俺のようなおっさんも暖かく迎え入れてくれた。三人の仲も良好で、ユキナも普通に会話の輪に入り込めていた。


 だが、いつの間にベルフもリースも忘れちまったらしいな。


 強い冒険者になって、困っている人々を助けたい――そんな熱い思いを。


「ゴォォォォォォオオオオ……!」


 俺と対峙するドラゴンゲーテが、俺に向けて大きな口腔を開けた。


 これは【デスブラッドフレイム】――。

 小さな村一つなら丸ごと焼き尽くしてしまうほどの高火力を誇りながら、これを喰らった人間は数分間、精神崩壊の状態となる。虚ろな目でその場にただただ立ち尽くし、理性も意識を失ってしまった人形となり果てるのだ。


「んー! ん――っ!」


 ユキナもそれがわかっているからか、数段大きな声で俺の背に呼びかけてくる。


「ありがとなユキナ。こんなおっさんを気にかけてくれるなんざ……あんた、やっぱり優しいよな」


「ん――!」


「気にするな。今は一応Cランク冒険者としてやらせてもらってるが――事ここに及んで、力を温存するつもりはねえさ」


「ん…………?」


 不思議そうに俺を見つめるユキナ。


 そう。

 元勇者として世界を救った俺だが、このことは誰にも喋っていない。


 ――自身の命と引き換えに救った英雄、ロアルド――

 ――国はロアルドを教科書に載せ、英雄の教えを永遠に語り継いでいくことに決めた――


 ちらっと寄った図書館で、こんな本を見つけてしまったもんだからな。


 当然、今の時代でロアルドは死んだことになっている。そこで俺が勇者を名乗っても不審者扱いされるだけだし、よしんば「本物」だと思われたとしても、それはそれで面倒なことになるだろう。


 もとより、富にも名声にもまったく興味がないからな。


 せっかく世界が平和になったのなら、せめて平和に過ごしていきたい……。もう何にも邪魔されず、のんびりと適当に過ごしていきたい……。それが俺の願いだった。


 ベルフたちのパーティーに入ったのも、現代の常識を学んでいくのと同時に、これだけ和気あいあいとしているメンバーとなら平和に過ごしていけると思ったからだ。


 ――だが。

 ユキナが命の危機に瀕している今、そんなことにこだわっている場合ではない。


 ここは覚悟を決めて、昔の力を解放しなければならないだろう。


「三秒でケリをつける。覚悟を決めろよ、クソドラゴン……!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 俺が少し気合いを込めただけで、一帯に激しい震動が発生した。

 周囲に激しい突風が舞い、大轟音もまるでやむ気配がない。


「グォ……?」


 さすがに驚いたのか、ドラゴンゲーテが一瞬だけ目を見開いたが――。


 その咄嗟の隙が、命取りだ。


「死ね……!」


 俺は瞬時にドラゴンゲーテの目前に移動すると、額に拳骨をお見舞いしてやる。


 ドラゴンゲーテは二千年前に何度も戦ってきた相手。


 剣など使わずとも、前なら指一本で瞬殺できたんだが――。

 勇者としての力を解放するのは久々だし、ブランクを危惧して、ちょっと本気を出して拳骨にしてみた。


「グオッ…………?」


 だがまあ、やっぱりザコはザコだな。


 俺が適当に放った拳骨によってドラゴンゲーテは白目を剝き、その後はいっさい動かなくなった。

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