第44話 ◾️
いつだって、そうだ。
私の事など誰も気にもかけない。
確と目に見えるもの、そして
顕かに 存在 を示すもの、
必須であると認定されるもの。
誰も彼も、そういうものしか
見ようとはしない。
日の下に生きる生命の美しさ、
鮮やかさ、力強さ。そればかりが
口々に讃賞される。
輝く光の下、誰も私の事には
気づかない。
ここに、確かに在るのに。
でも、時おり
暗い夜空に私を見つけてくれる
者たちもいる。
生気のない青白い貌で私を仰ぎ
取り憑かれた様に、讃美する。
只、祈られる事はない。
何事も身に課されない気楽さと、
周りの期待を一身に集める緊張と。
一体、どちらが快いものだろう?
姉は、数多の人々から崇め奉られ、
絶対的な力と 存在感 を持つ。
私はいつも姉の陰で、幽かに
存在を維持 している。
其々には又それなりの 理由 や
役割 がある。
自らの 在り方 を理解している
つもりだった。
でも
姉が羨ましかった。
羨望は、軈て 恨み へと
黒く暗く塗り潰されて行った。
姉が在るから故に、私は。
誰からも顧みられる事のない
私自身の存在さえも、姉あって
初めて認められる、その事実が。
悲しかった。悔しかった。
許せなかった。
私は 概念 であり、人が知って
初めてその 貌 を持つもの。
私は夜に集い来る者の 帝 で
あり、不安と迷いの 象徴
美しいと賛辞を受ける事こそあれ。
それは姉の 影響下 で初めて
成り立つ。
でも、ある時。
姉は自分を信奉する者たちに
貶められ、その大いなる力の故に
暗い土の中に閉じ込められた。
少しだけ、溜飲が下りたような
気がした。
姉は必死に抗い、叫び、怒り狂い。
火を放ち、天に嵐を地に断裂を、
海からは荒濤を呼び寄せた。
姉を怒らせた者たちも必死に
神凪ごうとしていたが、悉く弾き
飛ばされた。
私は我関せずと、異界の門へと
身を投じた。
そして闇の彼方から、その惨状を
ただ、具に観ていた。
一つの国が瓦解し滅んで行く様を。
でも、姉はどうして、あんな事を
許したのか。
まだ幼い人の子に、自らの半身を
置く事で『万事、恙無し』とする
なんて。
その 気紛れ が、私の中に再び
憎しみの蒼白い焔を灯した。
そんな時だった。
私は初めて 真名 を呼ばれた。
そして、やっと見つけたのだ。
私の 本質 を知る者
私に 祈り を捧げる者を。
嬉しかった。
私を見つけてくれた。そして私に
姉にすると同様の 礼 を尽くして
みせてくれた。
ならば、応えよう
我は◾️ 『國御霊』の脊 なれど
闇夜を幽けく照らす 蒼白き光
病める虚な 心 を読むもの
仰ぎ見る者の惑い、憂い、哀しみを
慰め、寄り添うもの
我は呼ぶ。
我に、付き従え。
闇夜の中の 光 とならん。
幽けき輝きに願いを込めよ。
さすれば 万事恙無し とする。
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