第20話 属性

 パラケル爺さんにポーション作りについて聞いてみた。薬草を刻み、水に溶かし、火魔法にて熱水で抽出する。冷ましたのちに土魔法で作った瓶に充填する工程を踏むらしい。属性魔法を使用する必要は厳密にはない。風で刻み、水で溶かす。火で温め、土の瓶の作成をそれぞれの魔法で代行する。早やかに完結させることが品質を高めることで必須のようだ。それぞれの工程は魔力を行わずに実施することもできる。包丁で刻んだり、薪で温めたり、市販のガラスの瓶や既存の瓶を再利用すればよい話だ。


 爺さんは、自らの魔力でこれらの工程をすべて行うことで最適化し、工程短縮とすることできるらしい。よって基本4属性をすべて扱うことができると、他の魔術師より安価に、より高品質なポーションが作成できる寸法だ。きっちりと作った爺さんのポーションは、どうやら他の魔術師が作成したポーションよりも味が良いらしい。【スキル;物質鑑定】をしてある程度効能を追記して販売しているとのことだ。【物質鑑定】がない魔術師の場合は、卸先に頼むことになる。アバウトだな、と思う。製造者責任もとい、品質管理はどこに行ったのか?この世界の治療・薬品管理に不安が残る。


【スキル;物質鑑定】は【スキル;鑑定】の下位互換のスキルらしい。魔術師、錬金術師のジョブの恩恵があると取りやすいスキルのようだ。物質限定のスキルとのこと。人によっては判る情報の濃さ、量が異なるので、練度頼りのところもあるようだ。爺さんはポーションなどの薬品を習って自分で作った過程で習得している。人や魔物への鑑定は【人物鑑定】がある。二種まとめたスキルが【鑑定】となるらしい。


 まずは、水を除く、他属性3つの習得に移る。まずは風属性だ。爺さんの話だと、大気を扱う魔法のようだった。爺さんによれば自分で呼吸している空気。風の振動を感じれば制御できるとの雑多な話だ。パラケル爺さんは、4属性の中でもあんまり得意ではない。


 むこうでの空気は窒素7割、酸素2割の割合だ。後は二酸化炭素を含むその他のガスだ。魔力を張り巡らすと、空気組成はそれほど変わりが無いように思える。もちろん排ガスなどは全くない。重力という意味でも、むこうと同じくらいだ。地球では10万kmの空気の層の厚さを1気圧と定義していた。水中なら10mくらいの圧力だ。空気を圧縮すれば熱が発生する。薄くすると凍結する、圧縮した空気はものを切り裂くイメージを取りつつなどのイメージをしつつ、周りの空気の制御を図る。


 今の自らの魔力を張り巡らせる範囲は1mが限度だ。手が届く範囲となる。その中の空気を感じ、把握し、圧縮させる。細長く出力させてその方向を床に落とす。床には煉瓦が敷き詰められていたが、少しえぐれていた。


 「空気を圧縮しているイメージは取れているな。風を極めた魔術師は、操作範囲は1kmを超えることもある。天候までも操れるようになる。ワシには無理な話だがな」

 大規模な魔法を操れる人物に驚きつつも、練習を繰り返す。煉瓦をえぐる操作を繰り返す。

 繰り返しながら、並行して考え事をめぐらす。大気を扱うことができれば、酸素への干渉さえできる。大気中の空気の組成、種類が知ることができれば、酸素を奪うことで隠密に人を殺れる。相手方が魔術師の場合は魔力に敏感なので無理そうだが。可燃性ガスを操作することで燃焼を維持して高温の作業もできるかもしれない。風魔法の将来性は広がりそうだ。


 「風魔法は習得したな。これからは、自らの体の10cmでもいいし、1cmでもいい。常に魔力を体の周囲にまとわりつかせろ。慣れれば皮膚のように敏感に検知ができるぞ。拉致被害もあったからな。周辺の魔素の感知能力はあるだけあったほうがよい。異変に気付く感覚を身に着けろ。そういう意味では戦う力がない小僧には風魔法は適しているな。戦う前に異変を察して、逃げろ。自己を防衛する能力、戦う能力はもちろん必要だ。商人の小僧にとっては、まずは戦いに巻き込まれないことが今後重要となるだろう。周囲への魔素への拡散が無くなれば、体からの魔素の拡散が格段に少なくなる。周辺の空気からの魔素の吸収も可能になるな。」


はい、わかりました、と爺さんに返答しつつ、また、自主練が増えてしまった、と呟く。感知と、危機管理は重要だ。商人の自分にとっての生命線。かならずものにしておきたい。


「今日はこれまでだ。あとは魔力操作をしつつ風魔法に慣れろ。訓練をしつつ作業所で店番をしてくれ」

爺さんはさっさと自宅がある奥へ引っ込んでしまった。

 

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