第19話 干渉

 魔力を使い果たした影響か泥のように眠ってしまった。次の日の朝、起きたときに違和感が生じる。魔力機関に違和感があり、魔力が濃くなっている感覚がある。パラケル爺さんに以前にも聞いたように感じる。枯渇が魔力機関に影響を及ぼすことについて再度聞いてみよう。レッド君の体に対する自分の影響は不明だ。もう少し観察する必要があるだろう。

 朝ご飯を食べ、昨日は楽しかったね、またやろうね、という妹を教会に送り、午前中は家業の手伝いを行った。まだ拉致事件の進展はない。父親に確認すると、冒険者に依頼済みとのことだった。午後は魔導具店でのお待ちかねの魔術講座となる。


「聴いたぞ。桶の水を何杯も空に放ったあげく、川の水も直接飛ばしたらしいな」

 情報を早く入手したパラケル爺さん。そういえば、爺さんの家の隣は細工職人の家だった。マリンの友達のローズから両親へ話があり、パラケル爺さんへ話が伝わったみたいだ。


「通常の冒険者の魔術師候補では、桶6~7杯くらいがせいぜいだ。貴族の子供でも20杯くらいだ。随分と魔力量が多くなったようだな」

「流石に昨日は、魔力が枯渇寸前でした。ただ、今日起きたら魔力が濃くなっていると感じました。大丈夫でしょうか?」

「お前は拉致事件を通して、魔力機関への親和性が高くなっていると思う。枯渇寸前まで持っていくと増えるのはその通りだ。ワシも親和性が高いほうだが、かなり辛いしもうできん。年だな」

 どうやら、枯渇寸前にするのは苦痛を伴うらしい。子供の体なのか、疲労感だけに感じた。毎日枯渇状態にしてから眠りにつくことを日課とすることにしよう。


「この段階に入ったのだから、色々と気づいただろう。大気にも、川にも、大地にも、ありとあらゆるところに魔素は存在する。体から自分の固有魔力を放出して自分の魔力範囲を確保し、周辺の魔素への干渉権を得る。魔術師の戦いとなると周辺の魔素の取り合いとなる。魔素を制御して自分の思い描く力とその性質を決めるのが属性魔法だ。土、火、風も扱いの基礎はほとんど同じだ。各属性への親和性や理解はあるがな。水で行ってきたのは制御が楽なためだ。話を聞くに、服からの水の乾燥を初見でできる位だし、魔力操作はしっかりやっていると思う。察するに、他の魔素との親和性もありそうだ。おそらく、お前はワシと同じく4属性か、全ての属性を扱うことができるかもしれない」


 爺さんの話は続く。

「魔力量、放出速度・魔力制御が魔術師の鍵となる。当然戦いとなれば、周囲の魔素の奪い合いが起こる。他人の魔力が染まったものを奪って制御下に置くのは非常に難しい。それはヒトだけでなく、魔物についてもそうだ。一旦干渉された魔力を奪うのは大変だ。覚えておけ。魔術訓練の次の段階は、一通りの属性魔法の取得をめざすことだ」


 ポーション作りはまだまだ先のようだ。つぎは属性魔法の扱いを習う必要があるようだ。

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