第18話 水遊

 まずは持ってきた桶に小川の水を汲む。ホーミィー村の水は小川から採取している。上水として上流から水を分岐させて村を経由させて下流に流している。当然爺さんのところの水も、ネル川の水の由来となる。水の組成は大体同じであろうと似たような制御感覚で魔力を通す。爺さんの所の水は、何回か魔力実践済みなので感覚は慣れている。魔力を通すとそのまま水が流れてしまい、霧散してしまう。どうやら、流水となると勝手が違うようだ。

 

 爺さんは言っていた。他人の魔力に染まった水はたくさん飲めないと。飲むときは、しばらく置いてから使用しているとも。もしかすると川の水は、他の生物の魔力に当てられているので、抵抗があるように感じる。流水はまだ早いと判断して川の水をくみ、慣らしていくことにした。しばらく試行錯誤を繰り返して、自然の魔力以外のものを排除してから染めれば良いとコツをつかんだ。何回か桶に水を汲みつつ、魔力を通すことを繰り返す。これは数をこなして慣れる必要があると思われた。


 川から桶で水を汲み、魔力操作をして、水を飛ばして川に戻す。桶で汲み、水を飛ばすと延々と訓練を繰り返した。しばらくすると暇な子供達が周りにいることに気がついた。


「マリンの兄ちゃんの魔法、水魔法みたいだね。たくさん飛ばして、でっかい雨みたいにやってみてよ、避けるからさぁ」

「おう、わかったよ、行くぞ!」と言って、桶の水をたくさんの水滴に分裂する。空に飛ばして雨のように。きゃあきゃあ言いながら二、三人の子供は水を避けていた。ここホーミィー村には娯楽が少ない。この程度でも楽しそうだ。雨を避けていると、周りにいた子供が集まりはじめた。一緒になって交じり始め、わーわー言って夢中になっている。仕舞いには、桶の水を汲む子と避ける子に分かれ始めた。子供たちは夢中で避け始める。最後は自分だけが水を散布する係となっていた。桶の水の操作は数をこなしたのでだいぶ慣れてきた。桶で水をくむのが面倒くさくなったので、川の水を直接扱い始めてしまった。調子に乗ってしまったのはいけなかった。川周りの河原は一面水だらけだ。子供達の服ももちろん水だらけだ。


「ハクション!」という言葉に自分だけでなく、他の子供もハッとする。皆、水だらけになって服も湿ってしまった。このままだと親に怒られるよ、とそれとなく言い始める。この場所での年長者は自分だ。怒られ案件だ。まずは自分の服の水を操作してみる。服にしみこんでいる水を意識する。魔力の浸透に非常に抵抗がある。水のみ制御、水のみ制御と念入りに集中する。これだと思ったところで、服の水滴を集め、周囲に飛ばすと服が乾燥した。同じように髪、皮膚についてる水滴も払う。無事に元の状態に戻すことができた。やれやれ無事解決と思った瞬間、周りの目が気になる。年下の子供達全員が自分をじっとみている。"もちろんやってくれるよね、ボクたちの分も"の目だ。

「仕方がないな、一列に並んで」

年下の子供達は軍隊のようにすっと並びはじめた。ここの年長者は自分だ。責任を取らなければならない。順番に乾燥をこなすことにする。親に怒られたくないのは子供達も同様だろう。必死に隠蔽工作を行う。


 総勢十人の子供の乾燥を行ったので、ほぼ魔力枯渇一歩手前まで魔力を行使してしまった。眠くて仕方がない。逆に、楽しかったね、と自分を除く全員のテンションは高かった。村に戻り、ふらふらになりつつもマリンと共に自宅に帰った。ご飯を食べたのち、スイッチが切れてたように眠りについた。


 夕食後には、マリンとその他の子数名の挙動がおかしいことを親ネットワーク経由にて両親が聞いたようだ。水遊びには早すぎる。風邪を引いたらどうするんだ、と怒られたのは仕方がないことだ。

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