第17話 制御
察するに、素材への理解が一定以上あると、自分の魔力制御下にしやすくなるとのことと予想する。複雑なモノより、単純なモノのほうが構造として単純なので楽に動かすことができるのだろう。他人の魔力に染まったものはさらに動かしづらいのでは無いか。水魔法の水を使用したポーションの効果もそれに違いないと思う。
コップ程度の水は、楽に動かすことができるまで上達した。さあ、次はバケツの水かなとキョロキョロしていると爺さんから声がかかる。
「コップ水の制御ができるようになったのか。早いな。」
「父さんと城郭都市に行った時に、ホーミィー村と城郭都市の水の味を比べたことがありまして。同じ水でも同じでは無いと考え後は、制御が楽になりました」
「ほぉ、よくそこに気づいたな。水を蒸発させると白いものが出てくる時がある。水に溶け込んでいる物質があるのだ。透明な水でも実は様々な物が溶け込んでいる。そこを理解すれば制御か楽になるのだ。なかなか理解しない者もいる中でたいしたものだ。俺は雑多なものが少しあるイメージで動かしているな」
やはり単純化すると動かしやすいのは間違いないようだ。
爺さんと話したのち、許可を得たのでバケツの水を試す。まずは水の中の不純物を確認・認識したうえで、制御を試みる。水分析表のものと微生物、固形物を不純物と見做して、バケツから浮かせていく。千切るように分裂させ、自分の周りを衛星のようにぐるぐると回し、回転させることができた。
「バケツの水でも、そこまでできるとは。合格だな。真面目に魔力制御の訓練をしているのがわかる。次は川の水を試してもらう。できたら声をかけろ。できるまでここに来なくて良いぞ。」
放置だ。課題は自分で解決する必要があるので仕方がない。爺さんはコツを教えるに過ぎない。仕方がないと思い、商店街がある村の中心地を離れて東に向かう。時間にして十分くらいで到着する距離だ。ホーミィー村の東側には川が流れている。川と言わればここだ。川は遥か向こうに見える山脈から流れ、魔の森を通る。さらに鎮守の森を横断してホーミィー村をかすめて下流に向かう。山の雪解け水を運ぶ川らしい。名前は確か”ネル川”と言ったか。はるか先に見える山脈が”ネル山脈”ということなのでそのままだろう。魚はとれるが、小魚が多い。ここも薬草などが取れる場所なので、川遊びと共に子供の遊び場の一つだ。
「あれ?兄ぃだぁ~。どうしたの。魔導具店でのお仕事は?」
と妹のマリンから声をかけられる。教会の勉強は午前中のみだ。子供は拉致事件があったので、森には入れない。必然として子供が川に集結してしまったようだ。川なら森から十分に離れているので許可されているようだ。近くには民家もあることで安心感はある。マリンは友達3人一緒に魚や薬草取りでお小遣い稼ぎだ。びしょ濡れになると怒られるのでできるだけ濡れないように作業をしていた。
「魔導具店の仕事はポーション作りのはずです。もうお暇に出されたのですか?」
妹の友達の一人、確かローズと言ったか。妹の同級の9歳と記憶していた。同じ商店街の細工職人の娘だ。妹は、ローズとフローラの三人で川に来ていた。フローラは鍛治職人の娘だ。
「暇は出されてないよ。ポーション作りに必要な、水の扱いを習っていてね。次の課題は川の水、ってこと」
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