3.ハーレムの作り方



 次期国王候補として意気込んだ割に、肝心なハーレムの作り方が分からない。そもそも女の子と深く関わった事がない時点で分かるはずもなく。そこはリサラ頼りになるだろう。


「それで、ハーレムはどうやって作ればいいんだ?」

「それはこれから説明するわ。まずはギルドを作る事ね」


 また突拍子の無い方向に話が飛んでいる気がする。ハーレムとギルドにどんな関係があるんだ。ギルドには女の子しか入れないとかそんな制約を作るのか?


「ギルドを作って女の子を募集するの。そこからハーレムを作りましょ!」

「そういう事か。なるほどギルドか……」


 その考えに納得した。リサラがギルドのマスターを努めるのか俺になるのか。恐らく後者だろうな。ハーレムを作るのは俺なんだし。


「言っておくけど郁がギルドマスターだから」

「やっぱりか。リサラとモニカが最初のメンバーか?」

「リサラ様はメンバー兼補佐役で、私はギルド内のメイドとしてお仕事させていただこうかと」


 モニカが補足するように言葉を紡ぐ。それは自身はギルドメンバーにはならないという事だ。先程の話だとモニカはハーレム候補。そしてギルドメンバーをハーレムに入れる。そこまでは話が繋がっていた。だがモニカの言葉によりまたしても話が若干ややこしくなっている。


「その言い様だとモニカはハーレムには入らないって事になるぞ?」

「いえ、私は既にメイドという職に着いてしまっているので……と言いたいのですが、実は私、魔法を使うのは苦手なんです」


 確認としてモニカに言葉の意味を問うた所、その意味は意外な理由を示していた。


 詳しく話を聞くと、モニカは申し訳無さそうにしながらも口を開く。


 魔法を使う事は出来るものの、コントールするのが非常に苦手で成功するのは3割程との事。実践として何度か攻撃魔法を使用した事もあったが、相手にダメージを与えられた事は2.3回しか無かったそう。


 その経験から元から得意であった家事などが生かせるメイドの職に着いた。


 以上がモニカのギルドメンバーには入らない理由だった。魔法が苦手ならば仕方ない。無理矢理やらせるのは心が痛む。


「それなら無理にやらなくていいよ。リサラ、それでもいいだろ?」

「彼女の事情は私も把握してる。これは私が考えた方法だから、郁の好きにしたらいいわ」

「リサラの考えた事?皆同じではないのか?」


 リサラの話が引っかかり、何度目かの質問となる。さっきから質問しかしていない気がする。それにも関わらず嫌な顔せず答えてくれた。


「本来は候補者に志願した女の子をハーレムに入れているの。郁は異世界から来たから確実に志願する子はいない。ならその解決策としてギルドを作る事を思いついたのよ!」


 非常に瞳を輝かせながらリサラが前のめりに説明を始めた。黙って聞いていると、俺を連れてくる前からどのようにハーレムを作るか、方法を考えてくれていたらしい。


 強引な所があるリサラだが、かなり優秀な人材のようだ。恐らくリサラに連れられて来た事、リサラの助けになろうと決心した事は間違っていなさそうだ。例え彼女が優秀で無かったとしても助けたいと思っていた事は変わらない。


「そうか。リサラ、ありがとうな。凄い助かる」

「……なんで郁に彼女がいなかったのか不思議で仕方ないわ。それだけ優しければ彼女くらい居ても可笑しくないはずなのに」

「俺が居た世界ではこの見た目で優しい事しても逆に不気味がられる事もあるんだよ。そう思われるくらいならって必要最低限でしか関わって来なかったんだ」

「私は郁様の事そんな風には思いませんから……元気だしてください」


 思い出して暗くなった俺をモニカが優しく慰めてくれた。本当にいい子だな。


 不良が優しい事をするとギャップでモテるみたいな話はよく聞いたが、不良でも何でもない俺が他人に優しくしても女性には何故か不気味がられた。友人から聞いた話だと、脅されるのではとか、暴力を振るわれるのではと怖がっていたらしい。心外だ。


 この世界ではそのように思う人は居ないのか、それともこの2人が優しすぎるだけなのか。それは定かではないが、今度こそ上手くやれるのではないだろうか。俺は再び希望を抱く。


「大丈夫よ。この国は見た目で判断する人はごく一部だけだから」

「そうですよ。私も郁様と少しお話させていただいただけですが、優しい方だと十分に分かりましたので」


 リサラに続きモニカまでがフォローする。そんな2人はとても優しい表情で。疑う事を知らないかのような目で俺を見つめる。彼女達のおかげで自信を取り戻せる気がする。今はまだ希望でしかないが、いつか現実となるのではないだろうか。


「本当にありがとう2人共。俺はここに来たばかりで何も分からない、右も左も分かっていない。頼る事も多いかも知れない。けど2人を、皆を守れるように強くなるから。一緒にギルドを立ち上げてくれないか?」


 改めて真面目に決意表明をした。まだまだたよりない初心者だけど、いつか守れるように。国民を守れるように強くなる。そんな意志を込めた瞳でリサラとモニカを見つめ続けた。密かに拳を握りしめた事には気づかれないように答えを待つ。


「当たり前じゃない。私が郁を選んだのは貴方がこの国の国王に相応しいからだって言った事を忘れたの?」

「私は郁様にお会いしたばかりですが、郁様なら安心してこの国をお任せできると思うんです!」


 1人は呆れたように、もう1人は希望を託すかのように告げられた言葉は背中を押すには十分だった。そんな期待を裏切らぬ様、気を引き締めて行かなければならない。


「まずはギルドを立ち上げるか。申請すればいいのか?」

「そうね、魔法教団に行って申請手続きすればギルドを作れるわ」

「ですが、その時にギルド名も決めるので予め考えておいたほうが良いかもしれません」


 ギルド立ち上げの手順をリサラに聞くと、魔法教団で手続きする事とその時にギルド名も決める事をまずしなければならない。順番としてはギルド名を決める事が先か。


「2人は何かあるか?こんな名前がいいとか」

「私は無いわねー……モニカは?」

「私も無いです……申し訳ありません……」


「いや、謝らなくていい。そうか……なら」


 しばし悩んだ後、ふと思いついた言葉。それをギルド名に提案する事にした。


「Believing heart……なんてどうだ?」

「それって郁の世界の言葉?なんて意味なの?」


 リサラの魔法により自動的に通じるようにはなっているものの、さすがに英語は変換できないようだ。英語はそのままで言葉になる為、言葉の意味を説明しなければならないのか。


「俺の居た国とは別の国の言葉なんだけど、<信じる心>って意味なんだ」


 俺は相手を信じる心を大切にしたい。ギルド内でも信じる心を忘れずにいて欲しい。そんな思いを込めて、提案した。どんな反応をするのか、不安で仕方ない。それを打ち消すように賛同する声が上がった。


「良いと思います。信じる心、素敵です!」

「郁らしいわ。それで申請しましょう!」


 2人はこの言葉を気に入ってくれたらしく、嬉しそうに視線を向けて来る。聞いた事の無い言葉の意味を知り、それを気に入ってもらえるのは嬉しいとは思ってもみなかったな。これからギルドに入ってくれる子達も気に入ってくれると良いが。


「それじゃあ、申請に行くか。リサラ、魔法教団って所まで案内頼めるか?」

「任せてちょうだい!」


 早速頼られてご機嫌で先を進んでいくリサラ。後に続くモニカと俺。メンバーが集まるまではこの3人で活動していく事になる。これから出会う子達どんな子なのか楽しみだな。

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