【05】焼け残った日記③~⑤


 ついに勇者ナッシュ・ロウが魔王クシャナガンを打倒した。

 あの禍々しき魔王の空中庭園は、白い光と共に消え失せた。その神々しき輝きは、世界に三日三晩の白夜をもたらすほど凄まじいものであった。

 まるで、魔王の復活より長きに渡りかげりを見せていた世界中の人々の心までをも、すべて塗り替えてしまったかのようだった。領内の到るところでお祭り騒ぎが行われ、身分問わず、老若男女、すべての民が白く霞んだ空を見上げて笑いあっている。

 しかし、私の心は浮かなかった。

 なぜなら、未だに勇者とその仲間たちの安否について、はっきりとした事が何も解っていないからだ。

 おお、この世の理を統べる女神よ! あの若者たちに加護を! そして安息の未来を!

 私はこれから身を清め聖堂で、あの若者たちのために、女神へと祈りを捧げる事にする。


 ◇ ◇ ◇


 今朝、嬉しい報せが届いた。

 安否の解らなかった勇者一行がシュトロムの港に到着したのだという。ここ数日は勇者一行の安否を案じるあまり眠れぬ夜が続き、日中も気分がふさぎ込んでいたが、その暗澹あんたんたる日々が夢だったかのように心晴れやかな気分だ!

 何でも一行が王都プルトに到着次第、魔王討伐を祝した凱旋式がいせんしきが行われる予定なのだという。

 さっそくプレラッティと共に王都へと向かう準備を始める。


 ◇ ◇ ◇


 信じられない。

 

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