第6話 俺は吹っ切った

 嶋野母とドライブの夜、忘れていた定刻の連絡。

 両親とビデオ通話で「別れた」と告げた。


 国道沿いの背景に、両親は自殺まで頭を廻らせたらしく「とにかく部屋に戻って」と、必死だったのが可笑しかった。愛されていることを実感した。


 再び単刀直入に「別れたけど、サッパリしたものだった」と、また嘘をついた。


 あとは大人同士、どんな連絡をして、どんな会話があるのか興味は無い。


 たぶん、数時間前に固く絞った心が「壊死えし」し始めたのだろう。


 俺の心に復讐も赦しも無い、ただ固く絞られた異物感。

 今までのこと、今後のこと、関わることにぜんぶ興味を無くすんだ。


 クリスマス前には、部屋から、家から、彼女の痕跡はすべて消えた。


 同中おなちゅうのスキャンダル好きからの連絡には「別れた。俺には分からない」とだけ伝えた。


 二つ増えたのは、部屋ではずっとヘッドホンを装着する習慣と、部屋に後付けした内鍵だ。鍵は自家発電の目撃者が勝手に付けていた。


 本当は両親の提案でマンションの転居も考えたのだが「こちらは何も悪いことをしていないのだから気にしない」と告げると、その話はおしまいになった。


 勉強とスポーツが良い気晴らしとなったようで、一桁の成績順位とレギュラーの座を得ることが出来た。


 年明けには、まぁまぁ吹っ切れていた。


 同じ体育館を共用する、女子バスケと女子卓球に、可愛くて面白い友達がたくさん増えた。


 バレンタインでは、人生の最高記録となる数のチョコを得た。


 手作りチョコの中から「コンドーム」が出てきた女の子と個人的に遊びに行くようになった。

 面白くて、楽しくて、笑えることばかりの人気者で、初めて人物に「見逃みのがせない」という印象を持った。


「初めて」のときは、デカい箱に1粒しか入ってない錠剤を使ったが、

 ホワイトデーでは「3倍返しという悪習」を堪能した。

 素敵で可愛い女の子は「やっと笑顔が自然になってきたね」と、

 俺以上に満面の笑顔で喜んでくれた。


 弁当係は、一週間ではなく「ずっと続けたい」と言ってくれたのが決め手だった。

異物混入御法度ヘンなもん入れるな」は厳守とし、ギブアンドテイク等価交換は「カフェは絶対に奢る」となった。


 2年時のクラス替えで、理系の成績優秀エリートクラスに振り分けられた。


 それからも、俺は随分と人気者になっていった気がする。


 少人数から大人数まで、何かしらの集まりでは必ず俺の鉄板ネタが求められた。


「騒ぐとストーカーで逮捕されるから、絶対に言うな」から始まり、

「♪リズムに 合わせて リモ コンを コン コン」で爆笑を得て、

「ナゾナゾの答え合わせが出来てない」で締めると、皆が正解にチャレンジした。


 俺の答えを求め、食い下がる相手には、


「投票用紙には『浮気女』って書く予定」


 と告げると、さらに困惑した顔になるのが面白かった。


―――――――――――――――――――――

鉄板ネタについては、人にしゃべり過ぎて、仕上がってます。


♪のリズムについては、

「トーン、トーン、トントントントン」

で、腰使いが振り付けられてます。



手作りチョコは①底のチョコを薄く作り

②型にチョコを流し、パッケージを押し込み、またチョコ

③固まる前に①のチョコで蓋をする   

外観でバレなくて良いそうです。 お試しあれ

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