学校、行きたくない

 次の日、あたしは熱を出して学校を休んだ。一平にも月希子にも会いたくなかったから、ちょうどよかった。母が心配していろいろな物を作ってくれたけど、あまり食欲はわかなかった。次の日もその次の日も、学校には行かなかった。


 布団にくるまって横になっていると、ふいに玄関のチャイムが鳴った。


 「ほたるー、月希子ちゃんよ」


 「ほたる、大丈夫? なかなかお見舞いに来れなくてごめんね」


 母がノックもせずにドアを開け、月希子が部屋に入ってくる。月希子はその手に、何冊ものノートを抱えていた。


 「いぺ兄がノート取ってくれたんだよ。私もこんなことしかできないけど、早く元気になってほしいって思ってる」


 渡されたノートを恐る恐る開く。中には一平の字で、びっしりと書き込みがされていた。板書の丸写しじゃなくて、ところどころイラストや図解も入った世界にひとつだけのノート。一平の書いた字が、大好きな字が、次第ににじんでゆく。


 「う、うわあああん!」


 「ほたる、どうしたの!? お腹痛いの!?」


 母も月希子も心配そうにあたしを見つめる。それでも、あたしはただ涙をこぼすことしかできなかった。

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