一平の好きな人
次の日の放課後、あたしは教科書を片づけて入部届を出しに行こうとしていた。
「ほたる、決めたの?」
月希子が話しかけてくる。あたしは大きく頷く。
「いぺ兄と一緒かー、楽しそうだね」
あたしはふと、一番の親友である月希子に一平への想いを打ち明けていなかったことに気づく。いっそ打ち明けてしまおうか。
「あの、つっきー、」
「あーごめん! もう部活行かなきゃ」
月希子は早くも部活で主戦力になっているらしい。あたしは引き止めることもできずに見送った。
足取りも軽く、美術室の前までたどり着く。あたしがドアに手をかけた瞬間、中から一平とちゆりさんの声が聞こえてきた。
「カラスくん、こないだ言ってた好きな人ってさー、誰なの?」
あたしはごくりと唾を飲む。続く一平の言葉に耳を澄ます。
「実は……霜鳥さんなんだ」
目の前が真っ暗になる。何も考えられない。一平が? 月希子を好き? なんで?
なんであたしじゃないの? 疑問符が頭の中を駆け巡る。
それからのことはよく覚えていない。ひたすらに走って家に帰った。背後で誰かの呼ぶ声がした気がするけれど、振り返ることはできなかった。
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