二人きりの帰り道
すっかり暗くなった帰り道に、ふたり分の影が伸びる。
あたしたちは何を話すでもなく、並んで歩いていた。一平はあたしのために、自転車を押して歩いてくれていた。その何気ない優しさがうれしくて、つい頬がほころんでしまう。
この時間が終わってほしくないと思ってしまうのはどうしてなんだろう。それじゃあまるで、あたしが一平のことを好きみたいじゃない。と、頭の中で言葉にすると一層身体中がカーッと熱くなる。
そんなことをぐるぐると考えているうちに、街灯の中に見慣れた一軒家が見えてきた。その前には一人のエプロン姿の女性が立っている。あたしの母だ。
母はあたしを見つけると、一目散に駆け寄ってくる。
「ほたる、遅かったじゃない! 心配したのよ、ってあら、一平くんも一緒? それなら安心ね。一平くん、これからもほたるをよろしくね」
「おばさん、こちらこそいつもお世話になってます。それじゃ神崎さん、また明日学校で」
一平はこちらに軽く手を振ると、押してきた自転車に乗る。
帰らないで、と言いかけた言葉を必死に飲み込んで、あたしも笑顔で手を振る。一平の姿が見えなくなるその瞬間まで、あたしは手を振り続けた。
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