ある休み時間

 それからというもの、あたしは放課後に一平から勉強を教えてもらうようになった。授業についていけないからというのももちろんあったけれど、それ以上に一平と少しでも長く一緒にいたいという気持ちのほうが強かった。


 あの時、一平がキラキラ輝いて見えたのは、夕暮れ時の光の加減のせいだと思っていたけれど、次の日もその次の日も、輝きは消えるどころか、強くなる一方だ。


 「ほたるー! 何ニヤニヤしてんの」


 月希子に声をかけられ、ふと我に返る。あわてて表情をもとに戻す。


 「部活決めた? 私は茶道部だよ」


 月希子が手に持っている紙は、どうやら入部届のようだ。月希子の家は茶道の家元、当然部活も茶道部というわけだ。


 「ええと、あたしは……」


 自然と視線が一平のほうに向かってしまう。


 「僕は美術部。中学も美術部だったしね」


 (美術部……かあ)


 休み時間が終わる頃にはすでに、あたしの心は決まっていた。

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