第2話 学年一の美少女さん
アラームの音がなり、僕は目を覚ます。そういえば、昨日は激動の日を過ごしたんだった。
いつも通りに学校は楽しんで。けど帰りに、染井が道でうずくまってた――ように見えた。
だから話しかけて――いろいろあって僕は猫を飼うことに――。
え!? 猫……。そうじゃん。猫飼い始めたんだよ僕。
あ、けど元気そうだ。よかったよかった。……家の壁は……。どうにかするし。
それで、昨日は猫の飼い方がよくわからないからって染井と連絡先を交換して……。
して……あれ。したあとどうだったっけな。
僕は自分のスマホを開いて、LINEの通知を見る。最近はメッセージが多いから通知を切るようにしてあるんだけど、染井だけは追加したばっかりでしてなかったはずだから……。
『じゃ、明日。いろいろ買いに行こうね』
通知は来てなかったものの、トーク欄を見ると、そのメッセージで会話が終わっていた。
つまりこの言葉が意味するところは――。
なるほど。僕は今日学校が終わったあとに染井と二人で放課後デート(笑)をするってことか。
…………すぅ。ふぅん。やるじゃん翔輝。
________
放課後デート(笑)をすることが決まったとはいえ。そもそも高校生の本分は学業だ。
もう入学してから3ヶ月。そろそろ自分の学年での学力がわかってくる頃である。
僕が通っている学校はなかなかに進学校らしいけど、そんな中でも僕は学年30位くらい。
いい感じだ。このまま行けば、いい大学にだって進めるんじゃないのかな。……まぁ、学年1位はなにを隠そう染井さんなんですけど。
染井が1位だったから、道でうずくまってた時にすぐわかったっていうのもある。
顔もいいってことで結構有名になってたりしたしね。何回か告白もされてたんじゃないかな……。
僕はそういうの興味ない人だし。友達がワーワー騒いでるのをふーんって聞く感じ? んでたまに口出しする。友達の反応を見るのがすこぶる面白かったりするんだ。
そうほら、今だって一人で登校してる僕の周りには何組かカップルがいちゃつきながら歩いてるんだよ。
いちゃつくのって、ラブコメ世界の中だけだと思ってた。というか、ラブコメみたいなことを現実でできる方が間違ってると思うんだ。
そんな……ハーレムなんて。
僕だってさ、顔がいいって言われたこともあるし。告白されたことだってあるんだけど。
付き合いたいって思ったことがないんだよね。そもそも仮面を剥がしたくないっていうのが一番大きい理由かも。
そんなことを考えてるうちに、学校につく。
あぁそうだ。今日もまた僕は仮面を被らないといけない。くれぐれも昨日みたいなヘマは犯せない。
過去のトラウマは……結構根深いんだな。今更ちょっとやそっとで回復するようなものじゃない。
才能を自分で捨てようとするレベルにはひどいやつだったんだから。メンタルが弱いって言われるかもしれないけど、僕の選択。
……その選択のせいで今若干苦しんでるっていうのは皮肉が過ぎるけどね。
さて、今日も頑張ろっか。
_________
実は僕のクラスには、学年で一番の美少女と言われている人がいる。
愛川志津香――クラスの中でも男子からの人気が高く、現に僕の友達も何人か告白して撃墜したらしい。
告白しても対応が氷で、他のクラスのカースト上位が告白しても見向きもされない。
けど、女子に対する人当たりはよくて――
「きたな、今日も学年の美少女様が――」
僕の一番の親友、中学からおんなじクラスの春川夏樹――こいつも愛川さんに撃墜された――が言う。
現に、愛川さんのことは撃墜された男子はもちろん、そうでない男子も目を奪われ、話題に出すことも多い。
――僕以外は、の話だが。
本当、恋愛なんてくだらないってつくづく思うね。別にすぐ別れるんだし。別れたあとがどうなるかなんて想像するだけで恐ろしい。
……あんなことをされるなんて思わなかったじゃないか。
まぁ、過去のことは振り返っていても仕方がない、か。
クラスのみんなが愛川さんに気を引かれている中で――染井がクラスの中に入ってくる。
染井は自分の席へと向かっていき、そこで授業の準備をしようとして――僕と目があった。
一瞬だけど、染井は笑ってるような気がした。
「なぁ翔輝、今染井さんが笑ってなかったか?」
「ほぉ……彼氏でもできたのか??」
「それはねぇだろ! けどすごい、これはビックニュースかもだ」
……実は昨日は普通に笑っていたなんて言えない。多分向こうだって、『僕』を守ってくれるから。
「まぁいいや。なぁ、昨日の霊術廻戦の更新話読んだ――」
……それにしても。なんで染井は僕の前でだけは笑うんだろうか。
気になるけど、聞けないね。
相手は僕に踏み込んできたけど、僕は踏み込まない。
余計な情を持ったら、何かあったときに邪魔になるだけ。
もう経験してる。裏切りは、いつ起こるかわからない。悪意は、相手に届いてないと思ってても届くことがある。
ほら、人付き合いを深くする必要はない。
どうせ猫の飼育が軌道に乗ったら、関わらなくなる仲だ。
相手だってほんとの僕を知ったら勝手に離れていくだろう。
猫でつながった仲は、猫がなくなったら何もなくなるだろ? 相手の覚悟だって――すぐに消えると思うしね。
―――――消えるかな。なんか不安になってきたぞ?
「なぁ翔輝、染井さんがまた笑ってたぞ?」
「やっぱいいことでもあったんじゃね?」
言えない。また染井と目が合って、その瞬間染井の表情が緩んだように見えただなんて。
勘違い、だったらどうする?
けど――――染井は笑ってる顔の方が可愛い気がするな――――。
――――――
今日から夜9時に投稿していきます!
ストックほぼない中連載してるので続くかどうかは作者次第!
ただ頑張って続けます! 星やフォローで応援してくださると続けます!
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