第62話 交わる魔物③
「本当に200人以上集まるとは思いませんでしたよ。レオンさん」
「なに、この程度、
「そう言ってもらえるのはありがたいが……あくまで我々ストゥートゥの目的は
「もちろん、理解しています。私にとっても第一のミッションは、ムカデの討伐ですよ。副次的な目的として、
「まあ我々も、多少なりとも魔物の国に手を出すわけですから、できれば殲滅というのが望ましい。残党に復讐に来られると厄介ですから」
「それはありがたい。それで、そちらの調査隊からの報告は上がったのですか?」
「えぇ。討伐隊が殺害されたと思われる野営地からほど近いクラキ川という川で、〈
「
「その類いの魔法に長けたものが1名おりましてね。その者からの報告ですよ」
「なるほど。それで、ストゥートゥからはどれほどの軍を?」
「おおよそ1000人といったところです。当然、私も参戦するつもりです」
「それは頼もしい」
*
大岩から魔物の国への帰りは、行きよりももっとかかった。ユーライがいたので当然だろう。具体的には、15時間ほど。
行きの12時間と合わせて27時間だ。
そうなれば当然、〈
結局、大岩に行って、そして帰ってきただけだが、疲労と時間はかかった。
今日はログアウトすることにした。
*
当然、今日もログイン。
現実時間で1日休んでしまえば、もはや何かが破綻してしまう。
城でログインした俺は、鍛冶場に向かう。
そろそろ、
静かに扉を開けるが、作業の音は聞こえなかった。
「調子はどうだ? ロイ」
「ミナト様!」
ロイはいつになく溌剌としていた。
「できました!
そう言ってロイは、3つの鎧を指差した。
たしかに、出来ていた。
綺麗に銀色に輝く、俺のサイズの鎧。レナのサイズの鎧。そして、アリスのものだと思われる丸い鎧。
「おぉ! やったな! ロイ!」
「はい! 自信作です!」
「早速……いいか?」
「もちろんです!」
ロイから許可をもらったところで、俺は鎧を身に纏う。
全身が、一切の隙なくびっしりと鎧に埋め尽くされる。
そして、俺の身体に最大限フィットするように、鎧がひとりでに動く。
着心地は最高に良い。
「どうだ? 人間と間違えそうか?」
「はい。ですが、人間などに擬態されるなど……高潔な
ロイのとんでも発言は、ひとまず苦笑いでやり過ごすことにする。
「ありがとな、ロイ」
「いえいえ! こちらこそ、
ロイが満面の笑みでそう言った時、示し合わせたかのように、レナとアリスがログインしてきた。
「ミナト。来てたのね」
「あぁ。2人揃ってログインとは珍しいな
「いや、アリスも『例の件』を知らなかったみたいだから」
なるほど。俺の時のように、ログアウトして情報を仕入れるよう促したのか。
「大変なことになりましたね」
「あぁ。本当に大変なことになった」
「で、昨日の首尾は? ……と言っても、さっきユーライさんを見たんだけど」
「問題なく完了した。昨日は行って帰っただけで終わったけど」
「まあそりゃそうでしょうね。あの森、遠いもの」
「で、そっちは?」
「とりあえず
「ゴトビキさん……ってことは、他の
「そういうこと」
「まあそれは仕方がない。それで、他には?」
「ゴトビキさんに案内されて、
「十分な戦果だな。お互いに」
「そうね。ただ、まだしたいことがあるの。こっちは、ミナトにも協力してもらいたい」
「俺にできることであれば、当然協力する」
「ちょっと厄介かもしれないけど……蝿の村を探したいの」
「蝿の村……たしかゴトビキがそんなことを言っていたな」
「えぇ。ただどこにあるのか、ゴトビキさんにも見当がつかないみたい。もう消滅してる可能性すらあるって」
「なるほど……ただ、それでもなおレナが探し出そうとしているということは……」
「えぇ。リターンはあるわ。間違いなく」
レナは不気味に微笑んだ。
*
手分けして蝿探しの旅に出てから、2時間が経った。
そもそも、蝿についての情報は少ない。
魔物の国の近郊にいること。
大きさは普通の蝿と変わらないこと。
知性はあること。
大量にいること。
この4つくらいだった。
そんな時。
山のざわめきを感じた。
鈍感な俺でも、感じざるを得ない。
そんなざわめき。
木々が揺れ、葉は不規則に落ちた。
風の方向は定まらず、木漏れ日はいつになく揺らいだ。
「なにか、くる」
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