第57話 魔銀採掘日記
アリスに掘り方を色々と教わったが、どうやら非常に長い戦いになりそうなので、日記形式で採掘の記録をとることにする。
なお、『何日目』という表記は全て現実世界でのものである。
*
1日目
俺たちがログアウトしている間にロイに作ってもらっていた石でできたツルハシを用いて土を掘り進めていく。
が、これが本当に大変。
相当強いはずの俺の筋力を持ってしても、少しずつしか掘れない。
さらに言えば、石でできたツルハシは脆く、数時間で使い物にならなくなってしまう。ロイに大量生産を依頼しておいて良かった。
一方、アリスは〈融解〉なるスキルを使ってサクサクと掘り進めている。
結局、今日は俺の元にミスリルはひとつもやってこなかった。
アリスが『分けてあげようか? なんなら今までのも』と言ってくれたが、それはなんだか違う気がしたので断っておいた。
別にやるべきこともないわけだしね。
2日目
段々要領は高めてきた気がする。
スタートして早々、プラチナが取れた。初めてだ。
俺の横ではレナも苦戦している。当然だろう。俺よりも全然、筋力のステータスが低い。
鉄とか銅は取れるんだけど、それ以上となるとなかなか取れない。アリスはたまにミスリルを取っているが、アリスですら『たまに』であるので、俺たちがこれだけ取れないのも不思議ではないのかもしれない。
今日もミスリルは取れなかった。残念。
3日目
今日も今日とて掘り進めるが、正直しんどい。
単純作業だし、ミスリルが一向にやって来ないので、達成感もない。
肉体的な疲労はほとんどないが、精神的にはかなり疲弊している。
短いが、今日のところはここら辺で終わることにする。
そうそう、俺がログアウトしている間に鉄でツルハシを作ってもらうようロイに依頼した。
作業効率のアップに期待がかかる。
4日目
鉄のツルハシはまだ出来ていないらしいので、もう何本目か分からない石のツルハシで掘り進める。
そんなことを続けていると、なんとレナがミスリルを発掘した!
鎧を作るには遠く及ばないが、大きな一歩だ。
俺の方がたくさん掘っているはずなのに、という思いも少なからずあったが、どちらにしても2人分の鎧ができる量が集まるまでやるつもりだ。同じことだろう。
そこからもしばらく掘り続けたが、今日もミスリルは出てこなかった。なぜ。
5日目
鉄でできたツルハシが届いた。
石のものとは比べ物にならない。
アリスと比べればまだまだ牛歩には変わらないが、その効率はグッと上がった。
気分上々。ノリに乗ってゲーム内時間で5時間くらい掘ったところで、遂にミスリルが姿を現した!
5日目にして念願!
あまりに嬉しくて叫び回ったが、レナに冷たい目で見られて我を取り戻した。
アリスはめちゃくちゃ祝ってくれた。
ロイとポポは魔王の城にいる。
あの鍛冶場だ。もちろん許可はもらってる。
ロイはもちろん鍛治をするためで、ポポは何かあったときのためにロイについてもらっていのだ。
ひと通り喜び終わって作業を再開すると、なんとすぐにミスリルがあった!
その後もポンポンミスリルは見つかり、最初に発見してから1時間以内に4つも見つかった。
大きさはそれぞれバラバラだが、鎧0.2人分くらいにはなったのではないだろうか。
偉大なる進歩。
6日目
気分良く掘り進めたが、4時間掘っても当たりはなし。
ただ、今日はレナの調子が良かったようで、計3つ取れたらしい。
アリスは相変わらず10だ20だと桁違いの数を取っている。
……やっぱりちょっと借りようかな。
7日目
うん。借りよう!
埒が開かない。
なぜ意固地になっていたのか分からないが、同じパーティのメンバーなのだし、ここは支え合いでいこうじゃないか。
適材適所とは良い言葉で、いつかアリスが困ったとき、俺たちが助けになろうじゃないか。
ということで『借してくれ!』と頭を下げると、アリスは嬉しそうに了承してくれた。
なんでも、『本当の仲間になれた気がする』だそうだ。それについてはあまり深掘りしないことにした。
『返さなくて良いですよ!』とも言っていたが、流石にそういうわけにもいかないので、改めて、ミスリルか、それが要らないのならばアリスの望む物を渡そうと思う。
アリスが持っていたミスリルの量は膨大で、一旦城に戻ってロイと相談したが、2人分の鎧を作るのに必要なミスリルは、アリスが持っていたミスリルの3分の1にも満たないという。アリス、恐ろしや。
あと、俺の提案でアリスの分の鎧も作る運びとなった。さすがにスライムが鎧を着たところで街には入れないと思うが、ステータスを見たところアリスは防御系に秀でていたので、いつか使える時がくるだろうという算段。
ロイは3つの鎧を完成させるのに、4日くださいとのことだったが、大丈夫だろうか?
当然ゲーム内の4日なので、現実では2日。
『大丈夫なのか?』と聞いたが、ロイは鼻息荒く『大丈夫です!』と言っていた。
どうやら楽しみで仕方がないらしい。
俺たちがいたら作業に集中できないだろうから、プレイヤー3人衆は鍛冶場から出た。
ポポはそのままだ。バフをかけて作業のお手伝いをしてくれているらしい。
ロイ、ポポ、超有能。愛してる。
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